盲検試験による再生関節軟骨様組織の評価

DOI
  • 黒木 裕士
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻運動機能解析学分野
  • 鳥井 勇輔
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻運動機能解析学分野
  • 山口 将希
    京都大学医学部人間健康科学科
  • 竹内 友季子
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻運動機能解析学分野
  • 岡 徹
    京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻運動機能解析学分野 京都警察病院理学療法室
  • 小林 雅彦
    京都大学大学院医学研究科整形外科学
  • 中川 泰彰
    国立病院機構京都医療センター

抄録

【目的】我々はOsteoarthritis & CartilageやArthritis Research & Therapy 等に関節軟骨研究を報告した.現在は処置した関節に自由な荷重運動をさせ関節軟骨や再生関節軟骨様組織は荷重に耐えるか、変性するか等を調べている.その際に組織をスコア化し評価することが重要である.評価の正確性を検討する目的で医師2名と理学療法士および学部生の合計4名が盲検試験を実施した.【方法】動物実験委員会の承認下に行った別実験の関節軟骨と再生関節軟骨様組織を評価した.別実験では家兎18羽の左膝蓋大腿関節に直径5mm孔をあけた関節軟骨全層欠損モデルを作った.右膝には関節切開して縫合するsham手術を施した.術後は自由に荷重運動を許可し、2、4、8、12、24および52週で家兎を安楽死させ膝を摘出した(各週3羽).摘出膝をフォルマリン固定後脱灰してパラフィン包埋した.6μm厚の切片を作りsafranin-O染色して合計36の標本を作った.36標本はWakitani score(細胞形態0~4点、染色性0~3点、表面形状0~3点、厚さ0~2点、周囲との統合0~2点の合計0~14点、正常関節軟骨は0点、以下スコア)を用いて4名の検者が盲検で評価した.4名は学部4回生(以下学部生)、大学院修士1回生(理学療法士、以下院生)、および整形外科医AとBであった.4名から2名選ぶ組合せは、ア)学部生と院生、イ)医師AとB、ウ)学部生と医師A、エ)学部生と医師B、オ)院生と医師A、カ)院生と医師Bの6通りである.各組合せにおいてスピアマン順位相関でスコアの検者間相関を調べたところ、ア)では0.82、イ)では0.93、ウ)、エ)、オ)およびカ)ではそれぞれ0.77、0.77、0.76ならびに0.73(いずれもp<0.001)であった.相関係数が高くないウ)、エ)、オ)およびカ)のスコアの違いを調べた.医師とスコアが一致した場合には3ポイント、スコア差が1~2点では2ポイント、差が3~4点では1ポイント、5~7点では0ポイント、8点以上ではマイナス2ポイントを与えて合計した.4人のスコアが完全に一致すると合計12ポイントとなるがその標本はなかった.そこで合計が4~11ポイントを「比較的一致」、マイナスポイントから3ポイントを「一致しない」と定義し、「比較的一致」および「一致しない」の標本を調べた.スコア化に用いた細胞形態、染色性、表面形状、厚さ、周囲との統合の5項の判定を個別に検討した.【結果】「一致しない」8標本ではスコアの細胞形態の項で4標本、表面形状の項で3標本、厚さの項で1標本の判定が分かれた.「比較的一致」の28標本では細胞形態の項で6標本、表面形状の項では1標本の判定が分かれた.染色性、厚さ、周囲との統合の項は26標本で判定が一致した.【考察とまとめ】関節軟骨および再生組織の評価では染色性と周囲との統合の判定は容易である.しかし細胞形態と表面形状の判定がやや難しいので評価に不慣れな間はこれらを判定する練習が必要である.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1176-A3P1176, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542376320
  • NII論文ID
    130004580023
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p1176.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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