リーチ動作のパフォーマンスと予測的な姿勢筋活動との関係

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【目的】<BR> リーチ動作は日常的に利用される重要な動作であり、体重心の大きな移動を伴う動作であることから、臨床でもFunctional Reach Test（FRT）などのバランス評価や訓練に多く用いられている。また、運動療法では動作のパフォーマンスを向上させるために反復練習を行うことが多く、その効果も多く示されている。正確なパフォーマンスには、動作前に発生する予測的な姿勢制御による姿勢の安定性や推進力が必要になる。予測的姿勢制御（anticipatory postural adjustment; APA）とは、自発運動や予測可能な外乱が加えられた状況で運動に先行して出現し、身体の動揺を最小限に抑え姿勢を安定化させるために働く。これは姿勢筋活動や足圧中心（COP）の移動として観察される。APAの変化が動作を反復することで生じるパフォーマンスに影響を与えている可能性があると考えられるが、それについては調べられていない。よって今回は、リーチ動作を反復して行ったときのパフォーマンスとAPAの変化の関係について、特に姿勢筋活動に着目して調べた。<BR>【方法】<BR> 対象は10名の健常成人とした。リーチ動作は施行毎に数十秒の休憩をはさみつつ50回行った。肩幅に開脚した安静立位を保ち、音刺激後にできるだけ素早く右手指で目標点へ正確にリーチさせた。目標点は直径2cmで右肩峰の高さとし、FRTの距離に設置した。また目標点を3N以上の圧で触れた施行は失敗とした。リーチ動作の計測には、筋電計、床反力計、3次元動作解析機を用いた。導出筋は、両側の前脛骨筋、腓腹筋、大腿直筋、大腿二頭筋とした。各関節運動の記録のため、全身27箇所にマーカーを付け6台のカメラを使用した。リーチ動作の開始は右手部マーカーが動き出した時間とし、リーチ動作の終了は手指が目標点に到達した時間とした。反復リーチ動作のパフォーマンス及び予測的な姿勢筋活動について、1～10回目と41～50回目を比較検討した。<BR>【結果と考察】<BR> リーチ動作の1～10回目と41～50回目の平均値を比較すると、動作の成功率の増加と動作時間の短縮が認められたため、反復によりリーチ動作のパフォーマンスは向上したと考えられる。一方、音刺激から動作開始までの時間は延長した。予測的な姿勢筋活動として、前脛骨筋・大腿直筋は興奮、腓腹筋は抑制を示し、それらの筋活動は反復に伴いより早期に出現した。また、動作開始前のCOP後方移動も筋活動と同様に反復に伴いより早期に出現した。このように、APAに要する時間を十分に取ることで、正確で素早い動作の準備を確実に行うことが可能と考えられる。これらの結果より、予測的な姿勢筋活動がリーチ動作のパフォーマンスに影響を与えることが示唆された。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0849-A0849, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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