寝返り動作における体幹運動分析
説明
【目的】臨床場面において寝返り動作が困難な患者をしばしば経験する.寝返り動作において、頭部コントロール、脊柱の適度な可動性、体幹筋力が重要であると報告されているがこれらの条件のみではなく、体幹の分節運動が乏しい、もしくは一部が過剰に運動している印象を受ける.しかし、寝返り動作における体幹の分節運動を定量的に分析した報告は見当たらない.我々は、先行研究において臨床応用可能な寝返り動作における体幹運動の計測分析方法を確立した.そこで、本研究では、上記の計測分析方法を用い、健常成人の寝返り動作における体幹運動の挙動を定量的に捉える事を目的とした.<BR><BR>【方法】対象は実験の趣旨を十分に説明し文書で同意を得た健常男女10例とした.被験者の頭部(以下H)、上部体幹(以下UT)、下部体幹(以下LT)、骨盤(以下P)にそれぞれXYZ軸を規定する3点ずつ、合計12点のマーカを貼付した.寝返り動作は条件を規定せず背臥位から左側へ寝返り、側臥位になるまでとした.被験者の頭尾側、右側に各1台、左側に2台の合計5台のデジタルビデオカメラで寝返り動作を録画した.録画した映像は、動画計測ソフトウェアMove-tr 3D(ライブラリー社製)を用いて三次元化し、X軸回りを屈曲方向、Y軸回りを回旋方向、Z軸回りを側屈方向の運動とし、各体節の角度変化を検討した.<BR><BR>【結果】<BR>10例ともに各体節の挙動はそれぞれ異なったパターンを示した.屈曲方向の運動では全ての症例で運動開始直後に骨盤の後傾を示した.また、体節が屈曲後に伸展方向への運動を示すパターンが8例、屈曲後に伸展がみられないパターンが2例であった.前者において伸展運動の起こる体節はP・LT間5例、LT・UT間1例、UT・H間2例であった.後者は2例ともP・LT、LT・UT間の屈曲運動を示した.回旋方向の運動ではHまたはPの遠位側から運動が開始され左回旋後に右回旋の挙動を示すパターンが9例、左回旋し右回旋がみられないパターンが1例であった.前者において右回旋が起こる順番はHまたはPの遠位側から起こるものが8例、UT・LTの中枢から起こるものが1例であった.側屈方向の運動では各体節で左右側屈を示し、10例ともにいずれかの体節において運動方向が逆転した.<BR><BR>【考察】<BR>今回の結果から寝返り動作において体幹運動は分節的に行われている事が示唆された.これは質量の大きい体幹を背臥位から側臥位へ分割して移動させるための戦略であり、体幹を構成する多くの関節の動きが可能にすると考えた.また、四肢の動きが体幹の分節的な運動に与える影響も軽視できないと考えた.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A3P1137-A3P1137, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680542430720
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- NII論文ID
- 130004579985
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可