歩行の立脚中期における立脚側上肢への重量負荷が股関節周囲筋の筋活動に与える影響

Description

【はじめに】<BR>臨床において,股関節疾患患者などのDuchenne歩行の改善に患側上肢へ重量負荷を用いることがある.本研究の目的は,歩行時の立脚側への重量負荷方法と負荷量の違いが股関節周囲筋の筋活動にどのような影響を与えるかを検討することである.<BR>【対象と方法】<BR>本研究の参加への同意を得た健常成人10名(男性5名,女性5名,平均年齢26.4±4.7歳)を対象とした.対象者にトレッドミル(BIODEX社製)上で2km/hで歩行させ,通常に歩行した場合と,右上肢に体重の1%,2%,3%の重量物を持たせ,右肩外転0°,45°,90°位でそれぞれ保持させて歩行した場合の筋電図を記録した.筋電図の測定にはBiometric社製のData LINKを用い,フットスイッチを踵部と母指MP関節に付け,立脚相(初期,中期,後期),遊脚相に分けた.測定筋は右側の中殿筋(GM),大腿筋膜張筋(TFL),大殿筋下部とした.筋電図波形処理は,各条件下で10歩行周期行わせ安定した3歩行周期の筋活動を,二乗平均平方根により平滑化し,歩行立脚中期における平均値(RMS)を求めた.各筋の最大等尺性収縮を100%として正規化し,%RMSを算出した.統計には反復測定一元配置分散分析およびFisher's PLSD法による多重比較検定を行い,有意水準は危険率5%未満とした.<BR>【結果と考察】<BR>通常歩行での立脚中期のGMの%RMSは22.7±8.2%であった.体重の3%負荷での肩外転0°,45°,90°のGMの%RMSは,それぞれ20.1±7.2%,18.7±8.0%,24.2±9.0%であり,肩外転45°では通常歩行と比較して有意に低値を示した(p<0.05).体重の3%負荷での肩外転90°のGMの%RMSは,肩外転0°,45°と比較して有意に高い値を示した(p<0.05).体重の1%および2%の負荷でのGMの%RMSは,肩外転0°では通常歩行と比較して有意に低値を示した(p<0.05).通常歩行での立脚中期のTFLの%RMSは25.3±17.2%であった.体重の1%負荷での肩外転0°,45°のTFLの%RMSは,通常歩行と比較して有意に低値を示した(p<0.005).体重の1%負荷での肩外転90°のTFLの%RMSは,肩外転45°と比較して有意に高い値を示した(p<0.05).体重の2%負荷での肩外転45°,90°のTFLの%RMSはそれぞれ通常歩行と比較し有意に低値を示した(p<0.05).大殿筋下部の%RMSでは,負荷量および肩外転角度間で有意な差は認められなかった.本研究の結果より,立脚側上肢への負荷量や負荷方法により歩行中の立脚中期におけるGMやTFLの筋活動量を,調節できることが明らかとなった.以上から,立脚側に重量負荷させてトレーニングや評価を行う際にはこれらのことを考慮する必要があると考えられた.<BR>

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542517632
  • NII Article ID
    130005014973
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a1043.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

Report a problem

Back to top