肩関節周囲の筋緊張軽減によって症状改善に至った肩関節周囲炎患者の治療経験
説明
【はじめに】今回、肩関節可動域制限および疼痛を訴えた患者に対し、安静時筋緊張軽減を重視した理学療法(以下PT)を実施し、症状改善に至った症例について報告する.本症例に対しては発表の主旨を口頭にて説明し、同意を得た.<BR><BR>【症例紹介】無職の65歳男性.右利き.約10年前より右肩に軽度の痛みがあった.平成20年3月、洗濯物を干す動作中に右肩関節痛出現.その後、右上肢全体に夜間痛と痺れを自覚し当院受診.鎮痛剤の服用とキシロカイン筋肉注射にて疼痛軽減したが、同年7月疼痛が再び増強.同年9月PT開始となった.<BR><BR>【初期評価】右上肢全体に放散するリーチ動作時の運動時痛、強い夜間痛、痺れを訴えた.運動時痛はVisual Analog Scale(以下VAS)で8/10、夜間痛は5/10であった.結帯動作、かぶりシャツの着脱が困難で、疼痛への不安を訴えた.右肩関節自動運動可動域は屈曲120度、外転90度、伸展5度、外旋10度であった.徒手筋力テストは疼痛が強く実施不可能であった.右側の大胸筋、三角筋、僧帽筋上部線維、小胸筋、斜角筋群、棘下筋、小円筋に過緊張を認めた.肋鎖間隙及び小胸筋圧迫により右上肢の鈍痛と痺れが増強した.アドソンテスト、モーレーテストは陽性であった.<BR><BR>【経過】過緊張を呈した筋に対するストレッチを中心に週5回のPTを実施し、肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節の自動運動を自主練習として指導し、2週間継続した.さらに腹式呼吸によるリラクゼーションを追加し、2週間継続した.<BR><BR>【結果】安静時痛および痺れは消失、運動時痛はVAS5/10に、夜間痛はVAS2/10に軽減した.右肩関節自動可動域は屈曲155度、外転120度、伸展10度、外旋20度に改善した.かぶりシャツの着脱は可能となったが、結帯動作の制限は残存した.アドソンテスト、モーレーテストは陰性であった.<BR><BR>【考察】本症例は以前から、右肩関節痛からの回避肢位や代償動作が習慣化し、頸部、肩関節周囲および上部体幹の筋緊張亢進が慢性化していた.今回の肩関節可動域制限および疼痛が筋緊張をさらに亢進させ、胸郭出口症候群様の症状を呈したものと考えられる.それに対して集中的なストレッチの実施に加え、自動運動およびリラクゼーションの指導を行い、患者が自主練習として継続できた結果、対象とした筋の筋緊張軽減を得ることができ、症状改善に至ったものと考えられる.一方で残存した疼痛および可動域制限に対しては再評価を実施し、継続した治療と指導が必要であると考えられる.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), C3P1416-C3P1416, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680542554368
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- NII論文ID
- 130004580685
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可