脳卒中急性期理学療法における早期起立訓練の効果について
説明
【目的】脳卒中ケアユニットにおける早期リハビリテーションが提唱されて久しいが、具体的な理学療法の手順を明記している文献は少ない.鵜飼らは、起立着座訓練5回を3~4セットと報告されているが、具体的訓練内容は示されていない.今回、早期起立訓練の方法や回数、休憩時間等を統一し、急性期における均一化された理学療法の効果を検討したので報告する.<BR>【方法】当院での早期起立訓練開始の診断基準は1)軽度意識障害2)入院後24時間神経症状増悪なし3)バイタルサイン安定4)運動禁忌の心疾患なし5)脳出血例は発症48時間以内に血腫の増大・水頭症の発現なしという5項目である.対象は平成20年5月から9月まで当院入院中の患者で、早期起立訓練可能な診断基準を満たした12例を統一プログラム群とした.内訳は平均年齢75.0歳、入院時NIHSS平均2.7点、下肢Br.stageVが3例・VIが9例であった.また上記基準に合致し訓練は統一せず、年齢、入院時NIHSS、下肢Br.stageが同程度の10名を選びコントロール群とした.統一プログラム群の訓練内容は、起立訓練と歩行訓練を各々5分間とし、訓練間に3および5分間休憩を入れることを基本とした.始めに行う起立訓練は10回または15回の起立着座動作時に両前足部へ均等に荷重することを意識して行い、立位時には左右対称な姿勢保持および片脚を一歩前へ出した状態での重心移動訓練を統一して行った.歩行訓練は麻痺側への荷重コントロールを意識して行った.調査内容は歩行訓練実施率、理学療法未実施日数率、歩行獲得率、再発・増悪の有無、在院日数とし後方視的に検討した.尚、本研究は福岡脳卒中データベース研究により対象者の同意を得た.<BR>【結果】統一プログラム群の歩行訓練実施率は89.3%、理学療法未実施日数率は4.1%、歩行獲得率は83.3%、再発・増悪はなし、在院日数は24.5日であった.コントロール群の歩行訓練実施率は96.2%、理学療法未実施日数率は10.5%、歩行獲得率は66.7%、再発・増悪はなし、在院日数は27.3日であった.統計学的に在院日数はp<0.001と有意差を認めたが、その他の項目は有意差を認めなかった.<BR>【考察】脳卒中ガイドラインによれば、早期から積極的にリハビリテーションを行うことで廃用症候群を予防できると述べている.統一プログラム群は理学療法未実施回数が少なかったことが廃用症候群を予防し、歩行獲得率を高めることができたと考えられた.また急性期の訓練量に関する明確なエビデンスが示されていないため、訓練量を増加させるのではなく訓練内容や動作指導を工夫することでプログラムの質を高めることが可能ではないかと考えた.今後は脳への血行動態が維持されている定量的な評価を行いながら適切な早期起立訓練を設定していくよう取り組んでゆきたい.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), B3P3266-B3P3266, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680542659840
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- NII論文ID
- 130004580542
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可