移乗動作における座位でのリーチについて

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【はじめに】脳卒中片麻痺患者の移乗動作において、手離しでの立位が自立に至らなくても、手すりやベッド柵を使用して移乗動作が自立に至る事が多く見られる.そこで今回、手すりやベッド柵の使用時に起こる座位でのリーチに着目し、座位でのリーチ距離について移乗動作自立のカットオフ値を検討した.またカットオフ値を受けて、移乗動作の自立に関係する要因(起居動作、座位保持、立ち上がり、下肢Brunnstrom Recovery Stage(以下BRS))を検討した.<BR><BR>【対象】平成20年3月~6月までに当院回復期病棟に入院された脳卒中片麻痺患者のうち、高次脳機能障害及び認知症を認めない、もしくは軽度の者25名(男性16名、女性9名、平均年齢74.6±33.6歳)を対象とした.これを移乗動作が自立している群(以下自立群)14名と、監視が必要な群(以下監視群)11名の2群に分類した.対象者には研究内容を説明し同意を得た.<BR><BR>【方法】測定は非麻痺側肩関節90°屈曲位、手指伸展位、体幹中間位、非麻痺側膝関節90°屈曲位、足関節中間位の端坐位で、足底は床に全面接地した状態を開始肢位とした.リーチ時の体幹運動は制限せず、非麻痺側手指を追視するよう指示した.開始肢位からリーチ時の最大距離を3回測定し、その平均値をリーチ距離とした.自立群と監視群のリーチ距離を比較した後、両群の平均値の中央をカットオフ値とし、判別確率を算出した.また、自立群と監視群において、起居動作、座位保持、立ち上がり、下肢BRSの各項目を比較した.統計処理はマン・ホイットニ検定を用いた.<BR><BR>【結果】リーチ距離は自立群と監視群との間で有意差を認めた(p<0.05).平均値は自立群が35.3±17.7cm、監視群が26.7±9.1cmである事から、カットオフ値は31.0cmとした.これらから、判別確率は自立群が64.3%、監視群が72.7%、両群が68.0%であった.また、両群を比較した結果、起居動作と立ち上がりのみ有意差を認めた(p<0.05).<BR><BR>【考察】リーチ距離に自立群と監視群との間で有意差が認められた事により、移乗動作が自立する上で座位でのリーチが一指標になると考えられる.この事からリーチ距離が31.0cm以上であれば移乗動作が自立する、または自立する可能性が高いと思われる.今回の結果では、リーチ距離が31.0cm以上でも、移乗動作が自立していない者もいた.この事から、移乗動作における自立への可否は、リーチ距離だけでなく他の要因も影響していると考えられる.両群との間で起居動作と立ち上がりに有意差が認められた事から、移乗動作に必要とされている姿勢保持能力よりも、起き上がり・立ち上がりといった動的なバランスを必要とする動作能力が影響すると思われる.今後は、座位でのリーチや動作だけでなく、他の要因についても検討していきたい.

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  • CRID
    1390282680542689920
  • NII Article ID
    130004580522
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.b3p2334.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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