歩行の予備能は高齢者において重要な臨床指標となる
説明
【目的】高齢者では様々な機能の予備能の低下が生じるが,予備能を示す適切な臨床指標ならびに日常生活活動との関係は十分に検証されていない.本研究では,高齢者の生活範囲を決定する重要な要素の一つである歩行機能に注目し,予備能を示す臨床指標を開発するとともにその有用性を明らかにすることを目的とした.<BR>【方法】対象は地域在住高齢者107人(平均年齢72.6±5.0歳)であった.調査項目は,応用歩行機能検査としてTimed “Up and Go” Test(TUG)を用い,至適速度(TUGcom)と最大速度(TUGmax)にてそれぞれ2回繰り返して計測した.予備能の指標(TUG-Reserve: TUG-R)は,TUGmaxに対するTUGcomとTUGmaxの差の割合を算出した(TUG-R=[(TUGcom-TUGmax)/TUGmax]*100/ TUGmax).その他10m最速歩行時間,歩行持久性の検査として6分間歩行距離(6MD),エネルギー効率の検査としてPhysiological Cost Index(PCI)を計測・算出した.また,老研式活動能力指標(TMIG-IC)を調査した.統計学的解析には, TUG-Rの級内相関係数(Intraclass Correlation Coefficient: ICC)を算出して再現性を検討した.次に,Pearsonの相関係数を用いてTUG-Rと歩行機能の各指標との関連を検討した.また,TMIG-ICの下位項目から対象者を2群に分け,t検定を用いて歩行機能の各指標と比較した.さらに,公共交通機関を利用した屋外活動の有無を目的変数,TUG-Rおよびその他の歩行機能の各指標を説明変数とした多重ロジスティック回帰分析(ステップワイズ法)を性,年齢,BMIを調整のうえで実施した.<BR>【結果および考察】TUG-RのICC(1,2)はr=0.82で,臨床導入可能な再現性が得られた.TUG-Rは,10m最速歩行時間,6MD,PCIといずれも有意な相関を示した.また,TMIG-ICの各項目の遂行状態によってTUG-Rに有意な差を認めた.多重ロジスティック回帰分析では,公共交通機関を利用した屋外活動の遂行に対してTUG-Rのみが有意な説明変数として抽出された.<BR>【結語】歩行の予備能を示すTUG-Rは,指標の再現性とともに歩行機能,持久性,生活範囲と密接に関連する高齢者において重要な臨床指標であった.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2006 (0), E1193-E1193, 2007
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680542720128
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- NII論文ID
- 130005014520
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可