跳躍動作の加速度特性

DOI
  • 萩原 礼紀
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 唐牛 大吾
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科
  • 町 雅史
    日本大学医学部附属板橋病院リハビリテーション科

抄録

【目的】<BR>本研究は人が跳躍する際にどのような動作加速度を示すのかを確認し、その動作特性を把握することを目的に実施した.観測された動作加速度データを修正型最大エントロピー法(Maximum Entropy Calculation: Memcalc)を用いてパワースペクトル解析を実施した結果,特異な動作特性が検出されたので報告する.<BR>【対象】<BR>身体機能に問題がない健常成人男性13名、女性4名、平均年齢24±7歳を対象とした.被験者全員に対し、本研究の意義・目的・方法を説明し書面にて同意を得た。<BR>【方法】<BR>被験者に携帯型3次元加速度計(Activtracer AC301:ACT,GMS社)をJacoby line中央に固定した.被験者に対し,跳躍の際両上肢は腰部に置き動作中は離さないように教示し,1m毎の両足同時踏み切りの跳躍動作を10m間反復させ,身体動作加速度を測定した.観測データをAcC3xA.exe(処理プログラム)にて処理した後、Microsoft Excelを用いてグラフ化し,X軸を時間、Y軸を加速度として描出した.また描出したデータのスパイク部分を位置情報として全てプロットし,全被験者の各プロットが全て収束する点を跳躍動作の変移点と定義した.3軸の加速度データのうち上下・左右方向にのみ同様の処理をおこなった.各点の平均および標準偏差を求め,動作中の位置情報としてどこに収束するかを判定した.各項目の統計学的検定には、Wilcoxonの符号付順位和検定を用い有意水準を5%以下とした.統計解析ソフトはSPSS for windows 10.0Jを用いた.mean±standard deviation(以下、mean±SD)で表した.<BR>【結果】<BR>1動作中の積算加速度の算出結果は昇順に、左右37.5±7.2G・上下16.5±2.9G・前後3.9±.6Gで, 動作成分比は6:3:1となった. 重畳した波形の解析結果から跳躍動作中に必ず通過する変移点が上下、左右ともに10箇所検出された.同時に跳躍動作における加速度の、測定値から見た開始順序は、右下から左上方向であった.両足同時踏み切りであっても,右下から左上方に飛び上がる動作軌道を示し,左右・上下に細かく振幅しながら動作している様子が描出された.また動作波形の1部から 孤立三角波を意味する“4”のゼロ近似値が検出された.同時にこれらは“べき特性”を示した.<BR>【考察】<BR>観測時系列データの時間領域および周波数解析結果さらに動作加速度の推移順序から、跳躍動作は体を左右に振幅させながら,上方向に放出することで推力を合成し成立させている動作と推察された.跳躍はその動作時間の短さと,孤立波と考えられるスペクトル値が観測されたこと、それらが通常生体のデータから観測されにくい“べき特性”を示した3点から、筋の収縮力以外の要素を含んだ運動方略によるもの、すなわち筋腱複合運動を使用し、両側性機能低下に対応する運動方略を選択している動作と推察された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A1079-A1079, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542728448
  • NII論文ID
    130005015009
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a1079.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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