人工股関節置換術前後の体重・筋肉量について

説明

【はじめに】近年、体組成計が普及し、簡単に体脂肪などが測定できるようになった。内部障害系の評価に利用されることが多いようだが、骨量や筋肉量も測定できることから今後は骨関節系分野の理学療法評価の一つとして利用される可能性も高い。今回は今後の基礎データにするべく、人工股関節置換術前後の体重・全身筋肉量・下肢筋肉量を測定し、測定値の比較検討を行なったのでここに報告する。<BR>【対象者と方法】対象者は当院で人工股関節置換術を施行した患者20名(年齢66.95±9.43歳、男性2名・女性18名)である。術前と術後1ヵ月に体組成計TANITA BC-118E(8電極法)にて体重・全身筋肉量・左右下肢筋肉量を測定し、測定値を術前と術後、それぞれの健側下肢と患側下肢について比較検討した。測定は食後3時間以上経過していること、排尿を済ませていることを確認し、電極に触れる部分は消毒用アルコールタオルで清拭した後に実施した。統計的解析にはt‐検定(両側)を使用し、有意水準は5%とした。<BR>【結果】術前体重は56.74±6.09kg、術後体重は55.29±5.90kgで有意に減少した。術前全身筋肉量は36.28±5.14kg、術後全身筋肉量は35.69±4.36kgで有意に減少した。術前健側下肢筋肉量は7.02±1.36kg 、術後健側下肢筋肉量は6.57±1.10kgで有意に減少した。術前患側下肢筋肉量は6.59±1.30kg 、術後患側下肢筋肉量は6.81±1.27kgであったが有意差はなかった。術前の健側下肢と患側下肢の筋肉量の比較では有意差はなかった。術後の健側下肢と患側下肢の筋肉量の比較では有意差はなかった。体重と筋肉量には正の相関があった(p<0.01)。<BR>【考察】術前と術後の比較では体重、全身筋肉量、健側下肢筋肉量は有意に減少し、術前および術後の健側下肢と患側下肢の比較では筋肉量に有意差はなかった。術前と術後の体重、全身筋肉量、健側下肢筋肉量の減少については病院内での生活を、術前および術後の健側下肢と患側下肢の筋肉量の比較では歩行は両脚で行なうことを考えると当然の結果かもしれないが、早期退院に向けても筋肉量の維持と向上は必要であり、それに伴う理学療法を検討する必要がある。有意差はないものの、患側下肢の術前と術後の比較では筋肉量は増加し、術後には患側下肢が健側下肢の筋肉量を上回る結果となった。インプラント挿入のためのインピーダンス変化のためか、もしくは術後の活動性向上のための純粋な筋肉量の増加か、こちらも検討課題である。体重と筋肉量については相関が見られたが、筋力と筋肉量の関係についての報告は少ない。今後、これらを解明していくことによって体組成測定が有効な評価になるかもしれない。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A1327-A1327, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542825216
  • NII論文ID
    130005015078
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a1327.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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