要介護者の転倒発生の要因について
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- 安原 健太
- デイサービスセンター神楽坂 静華庵
書誌事項
- タイトル別名
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- ―デイサービス利用者に対する26ヶ月間の縦断調査から―
説明
【目的】平成18年4月からの介護保険制度改正により,各機能向上サービスを提供する上で専門職によるアセスメントの実施が義務付けられるようになった.当デイサービスセンター(以下,当センター)においても制度改正以降,運動器機能向上プログラムを選択している要介護者に対し,アセスメントとして体力測定を定期的に実施している.当センターの利用者の中には,転倒による骨折などの外傷や発生に伴う外出制限・機能低下が原因となって,その後の生活の質を大きく下げているケースも見受けられており,高齢者を中心とする要介護者の転倒の予防は重要課題の一つといえる.その対策の一助として,本研究では体力測定実施者の経過を26ヶ月にわたり観察して,転倒の有無からその発生因子を明らかにすることを目的とした.<BR>【方法】平成18年4月時に当センターを利用し,近位見守りで歩行可能であった117名(男性39名,女性78名,平均年齢80.2 ±8.7歳)に対して,参加の同意を得た上で体力測定(握力,5m快適・最速歩行時間,30秒椅子立ち上がりテスト)を実施し,問診と個人記録を参考に調査開始半年前の転倒発生の有無,既往歴を調査した.歩行については測定時のふらつき,すり足,前傾姿勢の有無も観察した.最長追跡期間は平成20年5月末までとし,経過記録から転倒の発生を抽出した.体力測定の成績,歩行状態の変化の有無,転倒経験の有無を説明変数として,転倒頻度の比較にはMann-WhitneyのU検定及びKruskal-Wallis検定を用い,初回転倒の発生と各説明変数との関連の有無を年齢,性別,既往疾患の有無を調整したCoxの比例ハザードモデルで求め,有意水準を5%未満とした.<BR>【結果】26ヶ月の観察期間中,全対象者のうち61名(52.1%)が転倒を起こし,うち12名(10.3%)が骨折など重篤な外傷を負っていた.複数回の転倒を含めると頻度は62.6回/100人年であった.調査開始時における半年間での転倒経験,歩行時のすり足は転倒頻度を高め(p<0.01),初回転倒の発生のリスクも有意に高めていた(p<0.05).体力測定の成績による転倒発生リスクの有意差は見られなかったが,歩行速度の低下に伴い転倒頻度が高まる傾向があった.<BR>【考察】ふらつきや前傾姿勢によるバランスの崩れは自助具などの使用によりある程度リスクを下げることが出来る.一方で,すり足は段差や床の障害物への衝突から突然のバランスの崩れを引き起こすため転倒に繋がりやすいと推察されるので,足関節の機能や歩行能力の改善が,転倒の発生や再転倒の予防に必要であると考えられる.また,歩容の変化や過去の転倒経験も転倒を起こす指標となり得るので,簡単な問診や,体力測定として歩行速度の計測時に歩行状態も観察することで簡易的に転倒リスクを抽出できることが示唆された.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), E2S2001-E2S2001, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680542880640
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- NII論文ID
- 130004581199
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可