尖足に対するフィードバック方法についての一考察
説明
【目的】脳卒中患者において歩行を阻害する要因の1つにクローヌスや下腿の痙性といった問題がある.下腿三頭筋の高緊張による尖足に対し、短下肢装具を処方し静的での機能改善はみられたが歩行などの動的な場面では改善が得られなかった症例を経験した.足部機能の改善は得られたが高次脳機能障害により動作の獲得が困難であった.治療的電気刺激(Therapeutic electrical stimulation:以下TES)を利用したバイオフィードバックを用いたことで動的な場面での歩行の変化と身体的変化がみられたので考察を交え報告する.<BR>【対象と方法】脳梗塞左片麻痺を呈した50歳代女性.半側身体失認、注意障害が問題となり、足部をドアにぶつけることや、引っかかるなど転倒リスクが問題となっていた.Brunnstrom Recovery Stage(以下B.R.S.)下肢3、下腿三頭筋の筋緊張評価はFoot-pat test(以下FPT)を使用し、初期評価では0点であった.歩行時立脚初期は足先接地になり立脚中期に反張膝がみられていた.尖足に対し、タマラック足継手付きAFOを用いた装具療法を1ヶ月間実施した.静的場面では足関節背屈運動の機能的改善は得られたが、動的場面での改善は得られなかった.そこでTESを用い、立位でのステップ課題で麻痺側遊脚後期から立脚初期のタイミングでバイオフィードバックを行い1日15分×2セットを装具療法と併用して3週間実施した.また本研究の主旨を十分説明し本人から承諾を得た.<BR>【結果】1ヶ月間の装具療法ではFPT3点に改善した.装具未装着での歩行練習では足先接地であり、口頭支持での自己修正が困難であった.TESと併用し行ったことで、B.R.S.下肢5に改善が得られた.また歩行の場面では麻痺側遊脚期にて足関節背屈運動がみられ、立脚初期では、踵接地が可能となり、立脚中期の反張膝が改善され、装具未装着での歩行が可能となった.また左側への注意が促がされ、足部をぶつけることや引っかかることがなくなった.<BR>【考察】歩行時立脚初期での下腿三頭筋の高緊張に対し、装具療法を実施したが静的な場面での機能改善は得られたものの、動的な場面での足関節背屈が、高次脳機能障害により動作獲得が困難であった.バイオフィードバックを用いたことで口頭指示より安易に随意的な足関節背屈を促すことができ、動的な場面での足部機能改善につながったと考えられる.装具未装着での歩行練習でも遊脚期での背屈運動、立脚初期での踵接地が可能となり、装具未装着での歩行が可能になったと考えられる.今回、装具療法のみでは動的な足部機能の改善は得られたが高次脳機能障害により動作の獲得が困難であったが、TESによるバイオフィードバックを併用することが足部機能の改善と、高次脳機能障害に対しても改善がみられたことから有用であると示唆された.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), B3P3326-B3P3326, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680542885504
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- NII論文ID
- 130004580597
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可