2年半の昏睡状態を経て意識が改善した若年女性に好発する非ヘルペス性脳炎例の紹介

説明

【はじめに】<BR>2年半の昏睡状態を経たが、発症より7年経過し屋内四点歩行器歩行自立となった若年女性に好発する非ヘルペス性脳炎(Acute Juvenile Female Non-Herpetic Encephalitis以下AJFNHE)の症例を経験したので報告する.<BR>【症例紹介】<BR>33歳、女性、主婦.2001年幻覚、妄想、精神運動興奮が認められ、抗精神病薬を投与されたが症状悪化、昏睡状態となり全身性痙攣を併発したため当院救急入院.急性脳炎と診断される.抗ウイルス剤やステロイド、抗痙攣薬を投与するが反応せず、昏睡状態が続き人工呼吸器管理となる.<BR>【画像所見】<BR>入院時のMRIでは明らかな異常所見を認めなかった.発症3年後のMRIでは両側頭頂葉や海馬など大脳皮質に軽度の萎縮を認めた.<BR>【理学療法経過】<BR>2001年理学療法開始時は全身性の硬直間代性痙攣が頻発し、oral dyskinesiaや四肢の舞踏様不随意運動が見られ、40度位の発熱や頻脈・発汗障害などの自律神経障害が見られた.関節可動域運動・体位ドレナージ等を開始したが、痙攣重積が頻発しICU入退室を繰り返した.<BR>発症から2年6ヶ月後、急速に意識レベルが回復.上肢は舞踏様であるが合目的的動作が見られたが、下肢は痙性対麻痺で随意的な運動は見られず、筋固縮による著しい内反尖足・槌趾を認めた.座位や臥位姿勢等、体位の認知も出来ない状態であった.精神運動興奮状態におちいることが多く、皮質盲・言語障害を認めた.理学療法としては、座位バランスの獲得を目指すと共に補高付きSHBを作成し膝固定位で早期から下肢への加重を試みた.発症から3年4ヶ月後には下肢に痙性対麻痺・内反尖足・槌趾が残存しているが、座位バランス自立の状態にてリハビリ病院に転院となった.発症から3年10ヶ月後より当院外来理学療法を開始.下肢の伸筋痙性抑制を目的に補高付きSHB ・膝固定装具装着下での平行棒内全介助歩行を行った.両下肢に支持性が出てき、足底接地下での動作の獲得を目的に発症から4年5ヶ月後に右、10ヶ月後に左アキレス腱延長術が施行された.発症より7年後現在、両下肢に軽度の痙性麻痺は残存するが、自宅四点歩行器歩行自立・手すり利用にて階段見守りレベルとなった.<BR>【考察】<BR>現在はAJFNHEの症例報告が多数されてきており、治療方法なども多々報告されている.しかし本症例担当時は、AJFNHEとの診断もついておらず、またAJFNHEの治療法変遷期であり、このような転機良好な経過をたどるとは予想出来なかった.偶然にも長期にかけての理学療法を行う機会を得、経過を追うことができた.<BR>本症例は、他のAJFNHEの報告例と比し2年半の著しく長い昏睡状態をきたしたが、長期に渡り緩除に改善しており、発症から7年以上経過する現在も改善の兆しが見られる.これはAJFNHEの急性期に意識障害・痙攣などの重篤な病像を呈し、遷延経過を示すが、長期に渡り軽快するという特異的な特徴と一致する.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), B3P3321-B3P3321, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542889472
  • NII論文ID
    130004580592
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.b3p3321.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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