脳卒中片麻痺者の短下肢装具作製有無の違いについて
抄録
【目的】回復期である当院では短下肢装具(以下、AFO)を中心に装具処方を行っている.しかし、装具作製の判定基準は不明確であり、どのような患者様に作製を勧めていくべきか、また作製すべき患者様に作製できているかといった臨床的な疑問が挙げられる.そこで今回、当院に入院した脳卒中片麻痺者を装具作製群(以下、作製群)、非装具作製群(以下、非作製群)に分け、両群間にどのような運動機能や動作能力の違いがあるかを比較検討した.<BR>【方法】H19.4~H20.9までの脳卒中入院患者のうち、救急搬送や急変により入退院を繰り返した者、重度の認知症、意識障害の者を除いた入院時下肢Brunnstrom stage(以下Br-stage)が1~4の患者51名(平均年齢:60.6±10.6歳、罹患期間:174.7 ±41.6日)を対象とし、これを作製群30名(平均年齢:67.5±11.0歳、男20名・女10名)と非作製群21名(平均年齢:64.6±8.9歳、男13名・女8名)の2群に分けた.分析方法として両群間において、Br-stage、座位・立位保持能力、歩行自立度についてMann-WhitenyのU検定を、FIM合計・運動項目については対応のないT検定を用いて比較・検討した.有意水準は危険率5%以下とした.<BR>【結果】入院時Br-stage、入院時FIM合計(作製群72.4±25.0点、非作製群57.4±19.5点)・運動項目(作製群46.0±16.1点、非作製群35.5±13.9点)について有意差が認められた.(p<0.05) 入院時Br-stageについて作製群は重度で非作製群は軽度な傾向であった.入退院時の座位・立位保持能力、退院時Br-stage、FIM合計・運動項目、歩行自立度について有意差は認められなかった.<BR>【考察】今回の調査では入院時においては座位・立位保持能力以外の項目に有意な差が認められ、作製群の入院時Br-stageが重度な傾向にあり、ADL能力が非作製群に比べ高かった.退院時においては全項目で差は認められなかった.座位・立位保持能力については、重度の認知症、意識障害の者、また年齢において80歳代を除いたことから基本動作能力がある程度保たれていたと考えられる.Br-stageとADL能力の関係については、作製群の方が移乗動作をはじめ車椅子レベルでの身辺動作が自立している者が多い傾向にあった.これが両群の運動機能や動作能力における違いではないかと考える.また、退院時の歩行自立度については有意な差は認められなかったものの、実用歩行獲得者が作製群で73%、非作製群で57%と作製群に多かった.しかし、作製群で27%、非作製群で43%が実用歩行獲得に至っておらず、適切な装具作製が行なえているのかは疑問である.今後は麻痺側・非麻痺側機能、歩行能力、個人因子などの要因も含め、適切に装具作製が行なえているか作製基準や効果について検討していきたい.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), B3P3308-B3P3308, 2009
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680542907648
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- NII論文ID
- 130004580581
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可