即席下肢装具の考案

DOI
  • 平山 史朗
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部
  • 山﨑 裕子
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部
  • 井手 昇
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部
  • 宮本 忠司
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部
  • 渡邉 英夫
    社会保険大牟田天領病院リハビリテーション部

抄録

【目的】昨今、下肢装具は障害の程度に応じ機能性、利便性、素材等が考慮され様々なタイプのものが開発され使用されてきた。しかし、いずれにせよオーダーメイドによる外注製作が必要であり、義肢装具士に依頼し数週間の製作期間を費やしてしまう。今回、我々はソフトキャスト(スリーエムヘルスケア社)を用いて簡易に製作でき、直に装着できる下肢装具を考案したので紹介する。<BR>【特徴】1. ガラス繊維ニットにポリウレタン樹脂を含浸させた水硬性の可撓性プラスチックで製作が30分程度で可能、2. 必要に応じてホームセンター等で手に入る身近な材料を使用し補強などを行う、3. 硬化後も可撓性があり着脱が容易、4. 必要に応じてトリミングにて可撓性を変化できる、5. 工夫次第で汎用性があることが挙げられる。<BR>【製作方法】制御したい関節部周囲にストッキネットを被せる。その上に梱包用テープを巻く。固定したい角度で関節を保持しソフトキャストでキャスティングする。補強のためビニール管等を巻き込むこともある。硬化後に鋏でカットし取り外す。装着は適当な弾性バンドを利用する。また、トリミング次第で適度に可動性を拡大できる。<BR>【種類】膝装具は長期臥床や脳血管障害患者等で歩行時に膝折れが見られる症例に適用できる、杖を用いたロック機能付即席膝装具と膝固定用即席装具を試作した。また、短下肢装具(以下AFO)は腓骨神経障害患者や脳血管障害患者等で歩行時のつまずきが見られる症例に適用できる、可動性があるタイプと固定力があるタイプをそれぞれ試作した。<BR>【症例紹介】症例1:53歳、男性、脳梗塞発症にて当院神経内科に緊急入院。1病日目にベッドサイドリハ開始、11病日目にリハ室へ移行する。麻痺により下肢の支持性が低い為、既製品の簡易膝装具と訓練室に常備のAFOを装着し起立歩行練習を実施するが、装具の不適合があり、19病日目にソフトキャストを用い膝固定用即席装具と固定型の即席AFOを製作したところ歩行訓練がしやすくなった。最終的には31病日目にrigid TIRR AFOのみを処方し、45病日目に完成した。症例2:57歳、女性、多発硬化症の再燃による右下肢脱力にて当院神経内科に入院。3日目よりリハ開始となるが麻痺はその後も進行し、弛緩性麻痺となる。10日目に膝固定用即席装具と可動性がある即席AFOを製作した。20日目には即席AFOのみで歩行可能となり、31日目には裸足歩行可能となった。<BR>【考察】在院日数の短縮化やリハビリ期限の設定等により、可及的早期に効果的で効率的なリハビリを実施することが求められる。装具療法においても製作中に待たされることなく必要な時にすぐ装着できる装具が望まれる。今回紹介したソフトキャストを用いた即席装具はこのような要望に対応でき、機能性も従来の下肢装具と同等のものが期待できる。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), E1038-E1038, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542931072
  • NII論文ID
    130005014408
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.e1038.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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