脳卒中患者のFour Square Step Test(FSST)と身体的要素との関連性について

説明

【目的】Four Square Step Test(以下、FSST)は2002年にDiteらにより考案されたバランスの測定法であり、その信頼性と妥当性の検証より臨床的に有用とされている.我々は脳卒中患者のFSSTにおいて、他のバランス評価との関係より妥当性があると報告してきたが、身体能力との関係は報告していない.今回、脳卒中患者においてどのような身体的要素がFSSTの結果に影響しているかを検討した.<BR>【対象・方法】対象は本研究の説明を行い、同意を得た当院入院・通院中の脳卒中患者20名.杖、装具等の使用にかかわらず歩行監視か自立レベルでFSST遂行可能であった者を対象とした.また、全ての対象者は口頭指示に従えた.FSSTは4本の杖を十字に並べて4区画にわけ、前後左右にできるだけ素早く杖をまたぎながら移動する測定で、左手前の区画より開始し、時計回りに1周した後続けて反時計回りに1周する時間を計測する.FSSTと比較するために他のバランステストとしてTimed“up & go”(以下、TUG)testを測定した.各身体的要素として運動麻痺に関して12段階式片麻痺機能テスト(以下、HG)、歩行能力に関しては10m最大歩行速度、ADLに関しては機能的自立度評価法(以下、FIM)を測定した.FIMは運動に関する13項目のみとした.FSST、TUG、歩行速度は2回計測し、最速値を採用した.統計分析は各測定値の相関関係についてSpearmanの順位相関係数を用いて検討した.<BR>【結果】各評価の平均値は、FSSTでは15.5秒(6.1~47.5)、TUGでは12.6秒(5.7~22.6)、歩行速度では9.4秒(5.1~17.7)であり、HGの中央値は11(7~12)、FIMの中央値は89点(73~91)であった.FSSTと各評価の相関係数は、TUGではρ=0.848(p<0.01)、HGではρ=-0.495(p<0.05)、歩行速度ではρ=0.772(p<0.01)、FIMではρ=-0.515(p<0.05)と有意な相関が認められた.また、TUGと各評価の相関係数は、HGではρ=-0.444(p<0.05)、歩行速度ではρ=0.926(p<0.01)、FIMではρ=-0.704(p<0.01)と有意な相関が認められた.<BR>【考察】FSSTは各評価と有意な相関があることから運動麻痺の程度や歩行能力の身体的要素、日常生活動作(以下、ADL)に関連する動的バランス評価の測定手段の一つとして有効であると考えられる.他の先行研究と同様にTUGと歩行能力やADLとの有意な相関が認められ、FSSTと各身体的要素の相関よりも高かった.FSSTの運動要素にはまたぎ動作や後進動作がありTUGの評価項目に含まれていない運動要素であることが今回の結果に影響していると考えられる.今回、FSST遂行可能であった対象者はHGの中央値11、TUGの平均値12.6であることからもFSSTの難易度の高さが窺えた.<BR>【まとめ】今回の結果よりFSSTは歩行やADLに関連していること、簡易でスコア化しやすいことから臨床場面で有用な評価方法ではないかと示唆されるが、難易度が高く対象者が制限されるという欠点も窺えた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), B3P1323-B3P1323, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542963072
  • NII論文ID
    130004580429
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.b3p1323.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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