脳性まひ者に対するフィットネス活動『SASUKE』の取り組み

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抄録

【はじめに】<BR> 粗大運動能力分類システム(以下GMFCS)により脳性まひ児・者の重症度分類が可能となり、それぞれのレベルに応じた目標設定や治療プログラムの提供が必要とされてきている.さらに、GMFCSレベルIやIIの方に対しての筋力トレーニングやフィットネス活動が注目を集めており、それらに関する報告も増えてきている.当施設でも、平成19年4月よりGMFCSレベルIの脳性まひ者を対象に、集団でのフィットネス活動『SASUKE』を実施している.活動開始1年目は、筋力・持久力・可動性を含む健康状態の維持と自己管理できる能力を身に付けることを目的に取り組んだ.いくつかの課題が残り、幼いころから受身的な理学療法を受け続けてきた彼らは“自ら取り組む”という意識が低く経験も少ないことが分かった(第30回九州理学療法士作業療法士合同学会にて報告).そこで、活動開始2年目は“自己選択・自己実践”を目標に加え、対象者中心のフィットネス活動に取り組んだ.これまでに実施してきた『SASUKE』の活動について報告する.<BR>【対象】<BR> GMFCSレベルIの脳性まひ者5名(中学生2名、高校生1名、社会人2名).日常生活においてコミュニケーションや社会性に問題がない者とした.<BR>【方法】<BR>1.月2回の頻度で1時間実施.<BR>2.年間プログラムは理学療法士と対象者が共に立案.<BR>3.筋力・持久力・柔軟性・協調性の向上を目的としたエクササイズやバレーボール・バスケットボールなどのスポーツを実施.<BR>4.体力測定として年3回の定期的な評価(関節可動域・四肢周径・運動適性テスト)を実施.<BR>5.自己の障害や身体についての理解を深めるために学習会を実施.<BR>6.QOL調査とフィットネス活動の取り組みに関しての意見をアンケートにて聴取.<BR>7.変更事項や持参物などは対象者間でメールにて連絡し合う.<BR>【結果と考察】<BR> “自ら取り組む”積極的な理学療法の提供を目指して『SASUKE』を実施し、2年間で7種のスポーツに取り組むことができた.実施した体力測定の結果からは身体機能の著しい変化は見られなかった.青年期の彼らにとって、身体機能の低下が見られなかったことは良い結果であると捉えている.また、学習会を実施したことや体力測定の結果を自己で把握することにより、自分の身体について理解を深めることができた.さらに、対象者が自ら意見を出して活動内容を決定することもでき、活動2年目の目標である“自己選択・自己実践”を達成できた.集団でのフィットネス活動は対象者のモチベーションを高め“自ら取り組む”積極的な理学療法になると考える.今後は“自己選択・自己実践”しながら社会参加を果たし、自分の健康は自分で守りより充実した人生を送ってほしいと願い、サポートしていきたい.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), B3P1268-B3P1268, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680542970112
  • NII論文ID
    130004580375
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.b3p1268.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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