アテトーゼ型脳性麻痺児における姿勢運動障害と視覚機能の関連性
Description
【目的】ほとんどのアテトーゼ型脳性麻痺児は姿勢制御において困難性を有し、頭や体幹のコントロール、また目と手の協調性の獲得においては長期にわたり課題となる.特にアテトーゼ型脳性麻痺児は動揺性姿勢筋緊張をともない、頭部と体幹が不安定なために頭の正中位での保持が困難であり、視線を維持したり、スムーズに追視したりすることが難しい.今回我々は、アテトーゼ型脳性麻痺児における姿勢、運動障害が視覚機能に対してどのような影響を及ぼしているのかについて検証を行った.<BR><BR>【方法】対象児はアテトーゼ型脳性麻痺児4名(全員女児、4~12歳)、正常児1名(女児)であった.各児の姿勢は椅子座位あるいは座位保持装置を用いた座位とし、Eye Tracker(Tobii Technology社)を用いて計測した.前方に置いた液晶画面を見てもらうように設定し、1) 注視→左右への衝動性眼球運動(saccade )、2) 滑動性眼球運動(smooth pursuit )、3) 円を描くようにそれぞれ反対回りに移動する2つのターゲットの追視、について計測を行った.それぞれ頭をフリーにした場合と、中間位に保持してあげた場合について行った.計測においては、各対象児の保護者に計測の趣旨及び具体的計測方法を説明し、同意を得た上で行った.<BR><BR>【結果】障害が重度な症例においては、頭をフリーにした場合と保持した場合であまり差がないか、保持した時の方がよく見ている傾向が見られた.障害が軽度~中等度の症例では、頭をフリーにした時の方が良く見ている傾向がみられた.<BR><BR>【考察】重度児においては、通常は自分で頭を挙上し正中位で保持することが困難であるため、前方のものを見たくても見られないといった状況があるが、頭を中間位に保持してあげることで、頭のコントロールを援助してあげることになり、ターゲットをやや見やすい状況になったと考えられる.軽度~中等度のケースにおいては、頭を固定されることで、日常用いている代償パターンが使用できなくなるため、本来の障害による視覚機能の問題が提示されたのではないかと考えられる.<BR><BR>【まとめ】異常な姿勢筋緊張とそれによって生じる運動パターンは、子供の視覚機能に影響する.アテトーゼ型脳性麻痺児のような動揺性のトーンを持った子供は、頭部と体幹の安定性が欠如しているために一定時間注視したり、スムーズに追視したりすることが困難であることが多い.さらに視覚的注意の切りかえや機能的な視野も制限する.今回の計測において、運動障害と視覚機能の関連性が示されたが、障害の程度や代償パターンとの関連も詳細に分析する必要があると考える.身体からのフィードバックは認知や知覚を発達させる上で重要なファクターであると考えられるため、今後症例を重ねて検討していく事が必要である.
Journal
-
- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
-
Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2008 (0), B3P1282-B3P1282, 2009
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
- Tweet
Keywords
Details 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680542978688
-
- NII Article ID
- 130004580388
-
- Text Lang
- ja
-
- Data Source
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- Abstract License Flag
- Disallowed