障害高齢者の握力と6分間歩行距離の推移

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【はじめに】介護予防が叫ばれている中、デイサービスでの理学療法効果を明確に示すことが求められてきている。昨年の本学会にて理学療法の短期効果について報告した。週一回の理学療法介入により8週間後、対照群に比べ22.9m(95%CI7.2-38.6)歩行距離が延長した。しかし、これらの高齢者は老化により継時的には機能低下を呈するが、その程度を推測することは理学療法効果を判断する上で重要な情報となる。そこで、本研究の目的はデイサービスに通所している障害高齢者の歩行能力、握力を一年間追跡し、機能低下の程度を調査することである。<BR>【方法】対象はデイサービスに通所している高齢者32名(女性20名 男性12名 年齢79.1±8.6歳)である。診断名は脳卒中13名、変形性関節症7名、高血圧症3名、そして大腿骨頚部骨折後、脊髄小脳変性症、脊椎圧迫骨折、脊柱間狭窄症、パーキンソン病、認知症、前立腺肥大症、糖尿病、老人性精神病が各1名である。介護度は要支援3名、1から順に10名、7名、7名、4名そして介護度5が1名である。これらの対象のうち15名は理学療法サービス(PT群)を、他の17名はレクリエーションプログラム(レク群)を受けていた。アウトカムは握力と6分間歩行テスト(6MWT)である。ベースライン評価のあと握力は8週後と一年後に再検査し、6MWTは8週後、6ヵ月後そして一年後に再評価した。統計学的検討は全対象者のベースライン時からの継時的な変化をKruskal Wallis検定により分析し、また群間比較をベースライン値と各時点での測定値の差を、Mann-Whitney U検定により求めた。有意水準は両側検定5%とした。また、一年間の転倒数を調べ、群間のリスク比を求めた。<BR>【結果】脱落者はPT群3名、レク群2名の計5名であった。全対象者では、握力の中央値はベースライン時18.5kg、8週時15.0kg、一年時17.8kgで有意な変動は無く(p=0.246)、6MWTでもベースライン時150.0m、8週時169.5m、6ヶ月時182.5m、一年時165.0mで有意差は無かった(p=0.666)。群間比較では、握力は各時点(8週 p=0.852、一年p=0.399)で有意差は無かった。6MWTは8週時PT群に有意な歩行距離延長を認めた(p=0.042)が、以降は差が無かった(6ヶ月p=0.475、一年p=0.617)。転倒数はPT群3件レク群1件であり、レク群と比較したPT群の転倒リスク比は3.4であった。<BR>【考察】デイサービスに通所する障害高齢者の握力と6MWTの継時的変化を一年間に渡って追跡した。両者とも有意な変動はなく老化の影響は一年間では認められなかった。群間比較では、6MWT の8週時でPT群の短期効果が認められたが8週以降はリク群と差がなかった。転倒リスク比が示すようにPT群ではレク群の3.4倍のリスクがあり、身体障害を持つPT群では機能維持のために継続的な運動療法と転倒予防対策が必要であることが推察された。今後とも老化による機能低下の推移を追っていきたい。<BR>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543022720
  • NII Article ID
    130005014367
  • DOI
    10.14900/cjpt.2006.0.e0394.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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