重症間質性肺炎患者に対する呼吸理学療法の一考察

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  • 酸素療法に関する問題点について

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抄録

【はじめに】間質性肺炎(以下IP)は肺酸素化能が低下する拡散障害の代表的疾患である。重症例では高濃度の酸素投与が必要となる。近年、IPにおける呼吸理学療法(以下CPT)の有効性に関する研究報告が散見されるようになってきたが、慢性閉塞性肺疾患のような呼吸リハビリテーションのガイドラインが確立するまでには至っておらず、個々の症例に応じた対応をしている現状がある。そこで今回、平成18年6月に日本呼吸器学会・日本呼吸管理学会から出された酸素療法のガイドラインの内容に一部適合しない部分があった一方で、在宅復帰を果たした難渋した症例を経験したため以下に報告する。なお、発表に際しては当院規定の個人情報保護に関する届出及び承認を得ている。<BR>【症例】58歳、男性。平成18年にIPの治療を他院から引き継ぎ、呼吸器科にて外来follow中であった。平成19年1月頃から腰痛が出現し、50m程度の歩行がやっとであった。3月に咳嗽が出現し、徐々に悪化。その後38°C以上の発熱を認め、咳嗽出現の2日後には40°Cまで上昇したため、翌日呼吸器科に受診。胸部レントゲンにて両側肺野の浸潤影の悪化及び炎症所見及び黄疸指数の悪化を認め、またroom airにてPaO2 60torrと低酸素血症も認めたため、IPの感染増悪の診断で入院となった。<BR>【経過】入院第5病日よりBed sideにて呼吸理学療法開始。O2 4L/min nasalにてSpO2 94%、Pulse 77bpm。喀痰量が増大しており、排痰誘導を中心に実施。その後喀痰量は減少し、安静時の酸素流量も2L/min nasalまで減量したが、第7病日に担当理学療法士訪室時に個室トイレから排便後に戻ってBedに座った状態で浅速呼吸を認め、SpO2 66%(2L/min nasal、安静時の設定)となっており、SpO2 94%までの回復に5分程度要していた。そのため労作時4L/min nasalにて足踏み訓練を開始。本人は在宅酸素療法(以下HOT)を拒否していたが、労作時のdesaturationの改善が見込めず、HOT導入となった。しかし労作時は3L/min nasalも4L/min nasalも変わらず、鼻腔への違和感も強いために結局労作時は3L/min nasalとした。desaturationは強いものの、2分程度で安静時のSpO2に戻り、自宅内へのトイレまでは何とか歩けるようになったこと、本人の退院希望が強かったことから、第23病日に退院となった。<BR>【考察】酸素療法のガイドラインでは酸素投与は一般的に労作時のSpO2 が90%以上に保つような流量を推奨しているが、IPのような拡散障害の重症例では困難な場合も多く存在する。このような場合はそれに変わる方法として血中酸素飽和度をいかに短時間で安静時まで戻すことができるか、その運動レベルをどのくらいにするかという検討を行ない、考慮に入れて治療する必要があると考えられた。<BR><BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), D0368-D0368, 2008

    公益社団法人 日本理学療法士協会

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