理科系科目の履修状況は運動学成績に影響するか

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抄録

【目的】運動学は理学療法士養成課程の基礎専門科目に位置づけられ,解剖学,生理学とともに医療従事者を目指すものにとって非常に重要である.しかし,これら基礎専門科目は苦手とする学生が多く,国家試験でも平均点の低い領域の一つである.一方,理学療法士養成校は平成20年4月現在,320校をこえており,大学,専門学校,3年生,4年生と多岐にわたる.養成校に入学するには入学試験を受けるが,受験資格は高校卒業以上となっており,最近ではいわゆる理系,文系の別なく受験可能である. 本研究では,高校時代および大学の教養科目における理科系科目の履修状況と運動学との成績に関係があるかどうかを調査することを目的とした.<BR>【方法】本研究では,高校時代および大学の教養科目における理科系科目の履修状況と運動学との成績に関係があるかどうかを調査することを目的とした.<BR>対象と方法:本学2年次の学生で運動学を履修したもの243名(3年間)を対象とし,高校時および大学の教養課程における理科系科目(理科科目;物理,化学,生物,教養科目;物理概論,化学概論,生物概論)の履修状況をアンケート調査した.運動学の講義は半期で30コマ実施し,テキストは「基礎運動学(医歯薬出版)」を用いた.講義範囲は第1-4,7,8章で,期末試験の範囲も同様であった.試験問題は毎年異なったので,試験の成績から偏差値を算出してその値を用いた.統計解析は,理系と文系,履修状況の違いによる成績の差をみるためにMann-WhitneyのU検定を用いた.また,再試験該当者と該当者の履修科目状況との関係を調べるために分割表分析を行った.P<0.05で有意差ありとした.なお,対象者には本調査の目的と意義を説明し,同意を得たもののみアンケートの回収を行った.<BR>【結果】アンケートの調査対象は192人で,回収率は79%であった.理系と文系,履修状況の違いによる成績の差は認められなかった.また,再試験該当者における履修科目状況との関係は認められなかった.<BR>【考察】今回の調査では,運動学の成績は高校時および大学の教養課程における理科系科目の履修状況とは関連が認められなかった.運動学では,物理,化学,生物を学ぶのではなく,これらの知識の一部を利用することがある程度なので,特にこれらの科目の履修状況が成績に反映されることがなかったと考えられる.また,理科科目の知識も成績に左右されるものではないと考えられる.加えて,理学療法士を目指すモチベーションも保たれており,新たな学問である運動学を学ぶ意識も高いことも影響していると考えられる.<BR>【まとめ】運動学の成績は高校時および大学の教養課程における理科系科目の履修状況とは関連が認められなかった.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), G3P1579-G3P1579, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543120768
  • NII論文ID
    130004581488
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.g3p1579.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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