スクイージングがスパイロメトリ所見に及ぼす影響
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説明
【目的】スクイージングとは排痰を目的とした手技の一つで、胸郭圧迫法から発展したものと考えられている。換気力学的には換気量の増加、吸気・呼気流速の増加、肺コンプライアンスの改善など様々な効果が期待されている。しかし、胸郭の自然な動きに反した加圧を行ない、生理学的には誤った手技であり、効果については賛否両論である。本研究では、健常者にスクイージングを行うことにより、呼吸機能にどのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的とし若干の知見を得たので報告する。<BR>【対象】対象は事前に同意を得た健常男性11名であり、平均年齢25.9±4.6歳、平均身長169.3±5.0cm、平均体重62.6±8.3kgであった。<BR>【方法】背臥位で安静呼吸を行なった後、最大吸気の直後に努力性呼気を行なわせた。次いで、同様の体位で安静呼吸を行なった後、最大吸気の直後の努力性呼気に合わせて、両下部胸郭をスクイージングした。スクイージングは同一の理学療法士が行なった。測定は日本光電社製電子式スパイロメーターMFR-8200を用いて、肺活量、一秒率、一回換気量、予備吸気量、予備呼気量、最大吸気量を測定した。トランスデューサは被検者以外が保持していた。統計学的分析にはt検定を用い、優位水準を5%未満とした。<BR>【結果】スパイロメトリ所見を努力性肺活量測定時・スクイージング時の順に以下に示す。肺活量は4032±528ml・4175±483ml、一秒率は96.34±12.61%・99.74±11.12%、一回換気量は630±101ml・667±180ml、予備吸気量は2355±388ml・2540±348ml、予備呼気量は1046±344ml・967±309ml、最大吸気量は2985±383ml・3207±350mlであった。スクイージングを行なう事で予備吸気量、最大吸気量のそれぞれに有意差を高かくなった(p<0.05)。また、肺活量と一秒率はそれぞれスクイージング時に高い値を示した。一回換気量と予備呼気量ではスクイージングを行なったことでの変化は認めなかった。<BR>【考察】スクイージング時、予備吸気量と最大吸気量が有意に高い値を示したことは、スクイージングを行なったことで努力性呼気直後の吸気量と吸気流速を促進させたことを示している。努力性呼気における最終域の加圧が、換気量と呼気流速を増加させて、胸腔内が陽圧となった為である。これは、肺活量と一秒率に有意な傾向を認めることも示唆している。また、予備呼気量では正常な肺コンプライアンスを持つ健常者に対して、生理学的に反した胸郭運動が起こったことにより有意差が認められなかったと考える。<BR>【まとめ】本研究では、健常者にスクイージングを行なうことによって予備吸気量と最大吸気量が増加し、肺活量と一秒率も増加する傾向にあることが分かった。さらに信頼性を高めるために、胸郭に対する評価を併せて行なうことや、測定誤差を減らすために一人の被検者に対して数回の測定を行なうことを検討する必要性があると考える。<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), D1232-D1232, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543149696
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- NII論文ID
- 110006800789
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可