学生の自己学習と学内成績の関係

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  • ―勉強時間は成績と関係ない!―

抄録

【目的】<BR>近年,問題解決能力の向上の取り組みとして,問題基盤型学習(PBL)が注目され,理学療法教育への応用に関する報告も散見される.我々もPBLの要素を取り入れた講義を行っているが,PBLの成立には,学習者の自己学習が必須になる.そこで,学生の自己学習の現状を分析し,自己学習の指導について考察したので報告する.<BR>【方法】<BR>対象は本学理学療法学科第2学年65名(平均年齢23±4.1歳)である.対象者には本研究の趣旨,対象者の権利を紙面上で説明し,同意を得た.<BR>対象者に有記名による質問紙法でアンケート調査を実施した.質問内容は,“現状”(時間や方法など)に関する6項目,“満足度”に関する2項目,“阻害要因”とした.“現状”については,該当する項目を選択,“満足度”についてはVASで記載してもらった.“阻害要因”については,6つの選択肢から,多肢選択とした.対象を定期試験の成績から上位群,中位群,下位群に分類し,成績とアンケート内容の特徴を検討した.統計学的手法として,“現状”はm×n分割表を作成し,χ2乗検定を行った.“満足度”は一元配置の分散分析を行った.“阻害要因”は,選択肢ごとにχ2乗検定を行い,上位群と中位群,上位群と下位群,中位群と下位群で群間比較をした.全て有意水準は5%未満とした.<BR>【結果】<BR>“現状”に関しては,全ての項目で有意差を認めなかった.“満足度”に関しては,時間の満足度が上位群3.63,中位群1.6,下位群1.8と,上位群が有意に高かった.また,方法の満足度は上位群5.2,中位群4.4,下位群2.38と,上位・中位群が有意に高かった.“阻害要因”では,‘中学・高校でも行っていなかったから習慣がないため’という項目で,上位群3名,中位群11名,下位群10名と,上位群が有意に少なかった.また,‘方法に迷いがあるため’は上位群4名,中位群7名,下位群12名,‘どこから手をつけていいのかわからないため’は上位群6名,中位群10名,下位群13名で,上位群が有意に少なかった.‘他にやりたいことがあるため’は上位群10名,中位群6名,下位群4名で,上位群が有意に多かった.<BR>【考察】<BR>今回の結果より,自己学習の方法や時間,場所といった物理的な要因は個人差が大きく,成績との関係性が低いのに対して,その満足度は成績に関与することが示唆された.また,“阻害要因”として,‘習慣がないため’や‘方法に迷いがあるため’,‘どこから手をつけて良いかわからないため’が下位群に多かった.つまり,下位群は,中学・高校での学習習慣が乏しく,専門学校入学と同時に自己学習の必要に迫られ,不安を抱えながら学習している.その結果,学習効果が発揮されていないと考えられる.教員は学習時間などの物理的な要因を聞き,指導することが多い.しかし,本研究の結果から,学生に実現可能な自己学習方法を具体的に指導し,その満足度を向上させていくことが必要と考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), G3P3561-G3P3561, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543164288
  • NII論文ID
    130004581536
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.g3p3561.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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