モデルの視聴が運動学習に与える影響について

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タイトル別名
  • ―車椅子キャスター上げの習熟における影響―

抄録

【目的】現在,理学療法士は様々な場面で運動療法を行う.そのなかで運動学習を促通させるために,口頭指示や直接的誘導,視覚的矯正などを行っている.今回は同じ動作を行なう熟練者をモデルとし,その視覚情報が運動学習に与える影響について検討したので報告する.<BR><BR>【対象】対象者は本学の学生12名(男性4名,女性8名)年齢20.7±4.1歳とした.対象者12名を,熟練者のビデオを視聴する視覚刺激有群(以下α群とする)6名(男性2名,女性4名,年齢21.8±5.4歳),視覚刺激無群(以下β群とする)6名(男性2名,女性4名,年齢18.5±0.6歳)に分類した.<BR><BR>【方法】本研究において運動課題は車椅子によるキャスター上げとした.被験者には課題試行前に3種類の練習を行わせた.練習は各3分間ずつ行う事で1セットとし,計2セット行った.練習終了後,運動課題を1試行とした(α群についてはビデオを視聴し,その後課題を行った).以上のことを週1回,計4度行った.練習1は,平行棒内に設置したパイプ椅子に座り,平行棒を上肢で押しパイプ椅子ごとバランスがとれる位置(以下 平行点)まで後方に傾け,足底を離地させた状態を開始姿勢とする.そこから手を離し平行点を保つ練習とした.練習2は,同環境の椅子に座り,平行棒を上肢で押し足底を離地させ,平行点まで後方へ傾ける.平行点までの能動的な移動目的とした,練習3はキャスターを10cmの段差に乗せた車椅子に乗り,ハンドリムを操作しキャスターを浮かせ,継続させずにすぐ降ろさせる.キャスター上げの車椅子操作を目的とした.運動課題に関しては足底を床につけないことを説明した上で,車椅子前輪が10秒間以上床から離れたら「可」,10秒未満で「不可」とした.すべての動作をビデオで撮影し,結果を判定した.なお,被験者には実験内容を説明し,同意を得て行なった.<BR><BR>【結果】α群β群共に,6名中1名が「可」となった.初期と最終でキャスターが接地面から一度離れ,再び床に接地するまでの時間(以下 キャスター離地時間)は6名平均でα群2.26±3.57秒,β群2.47±3.47秒間の延長となった.最終のキャスター離地時間はα群2.58±3.70秒,β群3.03±3.63秒であった.<BR><BR>【考察】α,β群共にキャスター離地時間は増加していく傾向が見られた.第1回目の練習後の施行に関してはα,β群ともに有意差は見られなかった.このことより同一母集団であると推測できる.次に各群における第1回と第4回の試行結果を比較すると,α群のみマン・ホイットニーのU検定から有意差がみられた.(P<0.05)このことにより,モデル視聴を行うことでキャスター上げに関する学習が促進されたことがうかがえる.<BR><BR>【まとめ】今回視覚刺激が運動学習に与える効果について研究した.その結果,モデル視聴が運動学習に影響を与えることが示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2128-A3P2128, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543208192
  • NII論文ID
    130004580154
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p2128.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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