ハムストリング筋力の強さによるジャンプ着地時の膝周囲筋活動の違い
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説明
【目的】非接触型の膝前十字靭帯(ACL)損傷の受傷機転としてジャンプ着地動作があげられる。着地時のACL損傷予防において、ハムストリングが強く収縮することは大腿四頭筋の収縮による脛骨の前方移動を制動するために重要だとされている。先行研究においてUrabeら(2005)は、ジャンプ着地時の筋活動について男女で比較し、大腿四頭筋に対するハムストリングの筋活動量(Hamstring/Quadriceps ratio;H/Q比)は男性に比べ、女性の方が低いことを指摘している。一般にACL損傷予防のためにハムストリングの筋力トレーニングが行われているが、ハムストリングの筋力と着地時の筋活動の違いを報告したものは少ない。そこで、本研究はハムストリングの最大筋力に着目し、筋力と着地時の筋活動の関係を明らかにすることをとした。<BR><BR>【方法】対象は膝関節に既往のない健康な女子学生60名(年齢20.6±1.5歳、身長158.9±4.9cm、体重51.6±4.9kg)とした。ハンドヘルドダイナモメーターを用い、椅座位で膝90°屈曲位にて等尺性膝関節伸展および屈曲筋力を測定した。60名の膝屈曲筋力を体重で除した値(N/Kg)の上位15名を高筋力群、下位15名を低筋力群とした。ジャンプは最大努力下にて両脚で上方に跳躍し、左側の片脚着地とした。着地動作分析は3台のデジタルビデオカメラを用い、三次元動作解析ソフトにより足尖接地時および最大屈曲時の膝関節屈曲角度を算出し、両群間で比較した。表面筋電図を用い、導出筋は左側の内側広筋、外側広筋、半膜様筋、大腿二頭筋の計4筋とし、各筋の活動量は最大等尺性収縮時のRMSを100%として正規化した。足尖接地から膝関節最大屈曲時までの時間を正規化し、筋活動量を求め、両群間で比較した。両群間の統計学的検定には対応のないt検定を用い、危険率5%未満を有意とした。本研究はH大学大学院保健学研究科の倫理審査委員会の承認を得て行った。<BR><BR>【結果】膝関節筋力は大腿四頭筋、ハムストリングの順に高筋力群で6.3±1.3N/kg、3.6±0.5N/kg、低筋力群で4.4±0.7N/kg、1.7±0.7N/kgであった。着地時の膝関節屈曲角度は足尖接地時、最大屈曲時ともに両群間に有意な差はみられなかった。足尖接地から膝関節最大屈曲位までの大腿四頭筋の筋活動は低筋力群が高い傾向を示し、ハムストリングの筋活動は低筋力群の方が有意に高く(p<0.05)、H/Q比は低筋力群が高い傾向を示した。<BR><BR>【考察】本研究では低筋力群の方が着地時の大腿四頭筋、ハムストリングの活動量が高く、H/Q比も高かった。これまで着地において筋活動のH/Q比を高くすることがACL損傷を予防する可能性があると示唆されてきたが、本研究の結果からH/Q比と筋力を合わせて評価する必要があると考えられる。今後、さらに筋電図によるジャンプ着地動作の分析を進め、ACL損傷予防に役立てたい。<BR><BR>【まとめ】ハムストリングの低筋力群は、ジャンプ着地動作においてハムストリングの高い筋活動を必要とした。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), C1427-C1427, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543250176
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- NII論文ID
- 110006800984
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可