振動刺激が疼痛刺激時の脳血流反応に及ぼす影響

DOI
  • 金原 一宏
    聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部
  • 大城 昌平
    聖隷クリストファー大学大学院
  • 水池 千尋
    聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部
  • 重森 健太
    聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部
  • 根地嶋 誠
    聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部
  • 飯尾 晋太郎
    聖隷クリストファー大学大学院リハビリテーション科学研究科
  • 大杉 紘徳
    聖隷クリストファー大学大学院リハビリテーション科学研究科
  • 高山 善尚
    聖隷クリストファー大学大学院リハビリテーション科学研究科

抄録

【目的】<BR> 痛みの経験は,認知,情動,行動的側面に影響を及ぼし,脳の機能的,器質的変化を引き起こす.我々は,近赤外分光法(NIRS)により,疼痛刺激によって前頭前野領域の脳血流反応が刺激前から増加し,刺激終了後に急激に低下することから,この脳血流反応は疼痛刺激を受ける前の苦痛や不安といった主観的体験を反映していると推測した.また芳香がこのような脳血流反応を抑制することから,芳香が精神的ストレスを軽減させ,理学療法に適応可能であることを報告した.疼痛に対する理学療法では,マッサージや振動等を末梢器官に機械的刺激を与えることで,疼痛の抑制をはかることが多い.しかし振動刺激などによる機械的刺激が疼痛に伴う脳活動にどのように影響を及ぼすかについては明らかでない.本研究は,NIRSを用いて,振動刺激が疼痛に対する脳血流反応とストレスホルモン反応にどのように影響を及ぼすかを検証した.<BR><BR>【方法】<BR> 対象:研究の目的と方法を十分に説明し,同意を得た健常成人14名であった.実験プロトコル:疼痛刺激のみ(条件1),振動刺激のみ(条件2),疼痛刺激と振動刺激(条件3)で,脳血流反応とストレスホルモン反応(唾液アミラーゼ値)を測定した.手続き:閉眼端座位とし,測定前に電気刺激による疼痛経験を与えた後,各条件をランダムに配置した.電気的疼痛刺激は,電気刺激装置(Neuropack)により刺激強度はnumeric rating scaleで5の強さで,右膝関節内側裂隙に与えた.振動刺激は右大腿遠位部とした.脳血流反応の計測は,光トポグラフィ装置ETG-7100(株式会社日立メディコ社製)を使用し,前頭前野領域の酸素化ヘモグロビン値(以下,oxy-Hb値)の変化量を計測した.ストレスホルモン反応は唾液アミラーゼ値を測定した.課題後には,振動の嗜好性や気分等を尋ねるアンケートを実施した.<BR><BR>【結果】<BR> 1)oxy-Hb値は安静時と比べて,条件1では疼痛刺激前から増加し,刺激後低下した.条件2では振動刺激前は安静時と変わらず,振動刺激後に低下を示した.条件3は疼痛刺激前から増加し,疼痛と振動刺激後には急速に低下した.2)各条件の刺激前,刺激直後,刺激後の各区間(10秒)の平均oxy-Hb値は,刺激後で条件3は2と比較して有意に低値であった.3)唾液アミラーゼ値は条件2・3で減少する傾向が見られた.4)アンケート結果は,振動刺激で14人中11人が「リラックスした」と回答した.<BR><BR>【考察】<BR> 振動刺激は,疼痛に伴う脳活動を抑制し,リラクゼーションの効果があるように思われた.これには,ゲートコントロールセオリーによる求心性インパルスの抑制や広汎性侵害抑制調節,触・圧覚刺激などの求心性インパルスの修飾,情動反応の抑制作用などの機序が考えられる.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2080-A3P2080, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543351168
  • NII論文ID
    130004580107
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p2080.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ