肩関節挙上運動における健常人の肩甲骨周囲筋の筋活動

  • 髙野 巴香
    福岡リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 北條 琢也
    福岡リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 上堀内 三恵
    福岡リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 衛藤 聖
    福岡リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 栁田 恵美
    福岡リハビリテーション病院リハビリテーション部
  • 平川 善之
    福岡リハビリテーション病院リハビリテーション部

説明

【目的】<BR>臨床において、腱板修復術後患者の自動挙上開始時期に、特に挙上初期での肩甲胸郭関節の機能低下をきたす例を多々経験する.肩関節運動に際し、肩甲胸郭関節に対する固定作用として前鋸筋の活動は重要とされる.さらに、前鋸筋と僧帽筋上部線維・下部線維はforce coupleを形成し、共同筋として肩甲骨を上方回旋すると報告されている.またBaggらによると、挙上後半に筋活動が上昇するといわれている.しかし、肩関節挙上運動時の肩甲骨周囲筋に関する一定の見解は得られていない.そこで今回、肩甲骨の固定筋としての活動を比較するために、健常人における肩関節挙上運動時の前鋸筋に対する僧帽筋の活動を30°・60°・90°で筋電図学的に検証した.<BR>【対象・方法】<BR>対象は肩関節に既往のない健常人男性10名、年齢22.4±1.6歳、測定にあたり本研究の主旨を説明し同意を得た.被検筋は、前鋸筋(以下SA)・僧帽筋上部線維(以下UT)・中部線維(以下MT)・下部線維(以下LT)とした.測定は、端坐位にて肩関節挙上を上肢下垂位から最終可動域まで30°/Sの速度で3回連続実施した.このうち2回目の30°・60°・90°における筋活動を分析した.筋活動は表面筋電図(Noraxon社製テレマイオ2400)にて記録し、周波数1490Hzにて導出し整流化した.分析角度前後0.1秒間を積分し筋電図積分値とし(以下IEMG)、これを各筋の最大随意収縮時のIEMGで除し、%MVCとした.SAに対するUT・MT・LTの筋活動の割合を算出し、30°・60°・90°で比較した.統計処理は、繰り返しのない二元配置分散分析を用いた後、多重比較検定を用いた.なお本研究は、当院倫理審査委員会の承認を得て行われた.<BR>【結果】<BR>UT・MT・LT/SA比は、30°において各々1.3・0.3・0.6、60°において1.1・0.3・0.7、90°において1.0・0.3・0.6であった.全ての角度において、UT/SA比とLT/SA 比間、UT/SA比とMT/SA 比間にそれぞれ有意差がみられた.しかし、MT/SA比とLT/SA 比間に有意差はみられなかった.また、UT・MT・LT/SA比は、角度における有意差はなかった.<BR>【考察】<BR>LTは、上方回旋に関与し、挙上後半に筋活動が上昇するとされているが、今回の結果において、挙上初期より筋活動を認めた.<BR>肩関節挙上時に、SAは肩甲骨を前方牽引し、固定筋として作用するといわれている.解剖学的に肩甲棘内側下部に付着しており、この筋走行からforce couple機構を構成するLTは、MTとともに後退筋として働く.LTにおいて、挙上初期より筋活動が認められたことで、SAとともに挙上初期に肩甲骨の固定に関与していることが示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P3151-A3P3151, 2009

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543441152
  • NII論文ID
    130004580337
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p3151.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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