香りがもたらす、心身機能への効果
説明
【はじめに】ストレス社会と言われる現代において、香りがもたらす心身への効果が注目され、利用されている.しかし、香りが人体にどのような影響を及ぼすのか、古くから研究が行われてきたものの、客観的・科学的な検証は充分とは言えない.今回我々は、香りが心身にプラス効果を与え、臨床に活用できることを期待し、作業能力・ストレスについて香りの有無で比較検討したので報告する.<BR>【対象】健常者20名(男性8名、女性12名、平均年齢32.7歳)、本研究の趣旨に賛同していただけた方を対象とした.<BR>【方法】内田=クレペリン精神作業検査を用いて15分間の作業を5分間の休憩を挟み2回ずつ行い、その作業量と正解率を香り無の群10名と香り有の群10名で比較した.香りは日本人に好まれリラックス効果があると言われているスウィートオレンジ(フィトサンアローム製品)を使用した.芳香方法はディフューザーとコットンに精油を2滴含ませたもので行った.ディフューザーは空気の圧力で精油を小さな微粒子にし、香りを部屋中に広げるアロマ芳香器であり、アロマキャンドルやアロマランプと異なり、熱を加えないため精油成分が変化する心配がない.<BR>【結果】内田=クレペリン精神作業検査では、香り無群の回答数1回目727.7±249.3、正解率99.4±0.80%、2回目823.9±272.1、正解率99.3±0.68%、香り有群の回答数1回目797.5±153.3、正解率99.6±0.48%、2回目879.5±167.8、正解率99.8±0.19%であり、香り無群と香り有群の1回目・2回目の回答数と正解率に有意な差を認めた(P>0.05).<BR>【考察】内田=クレペリン精神作業検査の加算作業の作業量からわかる能力とは、何が出来るか出来ないかなど具体的な能力ではなく、物事を学習したり処理したりする基本的能力のことをいい、日常の学習や動作・行動のテンポやスピードの高低と深い関連があると言われている.この検査の被験者は、単調な思考回転を長時間持続することが求められるため、著しい負担とストレスを受けることになるが、今回、香り無群と香り有群で比較し有意な差を認めた.今回の結果から、香りが身体作業に効果をもたらせているものと推察できる.医療現場に身をおくクライアントは、大なり小なり心身のストレスを抱え、その対応も、臨床上非常に重要となることが多い.今回の結果は、好ましい香りが心身にプラス効果を与え、有意義な作用が存在すると期待され、我々の臨床でも機能障害によるストレスを軽減させたり、運動時の集中力を高めたりなど活用できると考える.近年、医療現場で香りを治療補助として取り入れられるようになりつつある.今後、更なる検討を加え、理学療法における臨床応用への有用性を検証してゆく.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2113-A3P2113, 2009
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543447040
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- NII論文ID
- 130004580140
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可