前腕可動域制限が肩関節外転運動の筋活動に及ぼす影響について

Description

【はじめに】<BR>臨床において肩関節の障害に加え,前腕回内・回外可動域制限(以下,前腕可動域制限)を併せ持つ症例に対し,前腕への治療介入により肩関節の運動に変化が生じる事を経験する.前腕可動域制限が肩関節の可動域やアライメントに影響を及ぼす事は諸家により報告されており,前腕の運動は肩関節回旋や肩甲骨の動きと連鎖する事から前腕可動域制限は肩関節の運動に影響を及ぼす事が推察される.しかし,前腕可動域制限が肩関節の筋活動に及ぼす影響について検討された報告は我々の渉猟した限り希少である.本研究の目的は前腕可動域制限が肩関節外転運動(以下,外転運動)時の同部位筋活動に及ぼす影響について検討する事である.<BR><BR>【対象】<BR>対象は肩関節に整形外科疾患の既往のない男性11名(平均年齢21.9±0.9歳)であった.本研究はヘルシンキ宣言の趣旨に沿ったものであり,対象者には本研究の目的と内容を十分に説明し,同意を得た後に測定を実施した.<BR><BR>【方法】<BR>まず被検者は立位で測定肢は右上肢とし,テーピングによる回外制限,回内制限,制限なしの3条件で外転運動時の表面筋電図(以下,EMG)を測定した.被検筋は僧帽筋上部線維,肩甲骨内転筋群,棘下筋,上腕二頭筋,三角筋中部線維とした.EMGの測定にはMyovideo(Noraxon社製)を用い,外転運動を前額面からデジタルビデオカメラで撮影し,動画とEMGを同期し記録した.その後,撮影した動画を基に外転30°,60°,90°,120°150°の位置でマーキングを行い,各区間での積分値を求めた.統計処理は各区間における3条件の積分値を多重比較検定により有意水準5%未満で検討した.<BR><BR>【結果】<BR>多重比較検定の結果,肩甲骨内転筋群の0-30°,30-60°区間において,制限なしと比較し回内制限時に統計学的に有意に筋活動が上昇した.その他の筋及び区間においては,統計学的な有意差は認められなかった.<BR><BR>【考察】<BR>今回,前腕回旋可動域の変化が外転運動の筋活動に及ぶす影響を検討した結果,肩甲骨内転筋群の0-30°,30-60°区間において回内制限時に筋活動の上昇が認められた.一般的には外転運動時における肩甲骨は約30°から動き始めるとされている.また,尾崎ら(2005)によると回内制限により静的立位時に肩甲骨の外転変位が見られる傾向があったとしており,本研究の対象者においても同様の現象が生じていた可能性がある事より,外転運動の早期から外転変位した肩甲骨を正常な位置に戻すように肩甲骨内転筋群を過剰に活動させていたのではないかと推察される.その他の筋及び区間においては,制限なしと同様の外転運動パターンが可能となり筋活動に変化が見られなかったと推察される.<BR><BR>【結語】<BR>回内制限は外転運動の初期において,肩甲骨内転筋群の活動を上昇させた事から,質的な筋活動の面から考えても肩関節にアプローチをする際,前腕への治療介入を行う事は臨床上有用ではないかと考えられた.<BR>

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543502208
  • NII Article ID
    130005014833
  • DOI
    10.14900/cjpt.2007.0.a0500.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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