肩甲骨面での上肢上げ下ろしの再現性と肩甲上腕リズム

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  • 三次元動作解析装置を用いた検討

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説明

【はじめに】<BR> 肩甲骨の動きが腱板断裂, インピンジメント症候群, 拘縮肩などの症例で正常群と異なることが報告されており,これらの疾患において肩甲上腕リズム (SHR) に変異が生じていることが知られている. SHR については肩甲骨面において多数研究されているが,三次元動作解析装置を用いた研究は少ない.SHR とその再現性に関して 15th International WCPT Congress において報告したが,これまでの研究で,上げ下ろしの目標や軌跡を規定する面を詳細に定めなくとも,簡単なオリエンテーションと数回の練習で,上腕骨の外転角度に対する肩甲骨の外転角度が,高い再現性(検者内信頼性)を示すことがわかった.<BR>【目的】<BR> 本研究の目的は肩甲骨面での上肢上げ下ろし運動時の SHR と、上腕骨外転角度に対する肩甲骨外転角度の再現性ついて検討することである.<BR>【方法】<BR> 本研究の主旨を説明し書面にて同意を得た健常成人 5 名 (22~30 歳,男性)の両肩を対象とした.測定は,上肢上げ下ろし時の画像データを三次元動作解析装置 (Motion Analysis Corp.,MAC 3D System) に取り込み (frame rate 50Hz),角度情報の解析は三次元動作解析ソフト (キッセイコムテック,KinemaTracer) を用いた.体表マーカーは,基本的立位肢位で,烏口突起,肩峰後角,肩甲棘内縁,肩甲骨下角,上腕骨外側上顆および内側上顆,Th2,Th7 および L5 棘突起の体表に貼付した.運動は目標を定めず最初に肩甲骨面の動きを誘導し数回練習したのち左右ランダムに各 5 回行い,1 週間以上あけて同様の試行を行った. SHR は,運動開始位置を 0 度に補正した後,上げ下ろし時の肩関節外転角度 10 度ごとに,肩関節外転角度から肩甲棘外転角度を減算した角度 (上腕骨外転角度) と肩甲棘外転角度(肩甲骨外転角度)を抽出しその比率を算出した.統計処理は,SPSS for Windows Ver.15J を用い,級内相関係数 (ICC) により検者内信頼性の検討を行った.<BR>【結果】<BR> SHR の ICC(1,5) は,上げ下ろしでは,-0.001~0.913 とばらつき,上げ 60度~最大~下げ50 度では 0.417~0.980 で比較的安定していた.また,肩関節外転角度 10 度ごとの肩甲棘外転角度の ICC (1,1) は 0.871~0.995,ICC (1,5) では 0.971~0.999 と高値を示した.<BR>【考察】<BR> 本研究の測定結果から,目標や軌跡を定めるなど詳細な条件設定をしなくとも肩関節外転角度 10 度ごとの肩甲棘外転角度の再現性はきわめて高く,測定の信頼性が高かった.SHR は上腕骨外転角度と肩甲棘外転角度の比率であるため,数値が大きくなるほど ICC の値は小さくなり再現性の評価に適さなかった. 各外転角度における肩甲骨の動きを検討するためには,肩甲棘の角度を調べることが有用であることが示唆された.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), A0502-A0502, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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