症例検討:重度要介護者のポジショニングと臥床マネージメント
抄録
【はじめに】<BR>長期臥床状態にある随意的な姿勢変換・意思疎通の困難な重度要介護者の生活をマネージメントするには,適切なポジショニングの選択が重要である.しかし,過去の報告の多くは,四肢のROM制限,脊柱の変形等を考慮しておらず,個々の身体の形態に応じた方法を選択するための更なる検討が必要である.この症例検討の目的は,脊柱の変形と上下肢の屈曲拘縮が著明な症例の臥位姿勢における圧力分布の特徴を健常者とも比較・分析し,有効なポジショニング方法の選定に関する推論過程を記述することである.<BR>【症例紹介】<BR>90歳の女性.認知症.入院期間26ヶ月.BMIは15.意思疎通が困難.背臥位姿勢は,腰椎軽度右凸側彎,軽度円背,体幹右回旋(5°),右肩甲帯挙上位である.ROM制限は右肘関節屈曲拘縮-90°,両股伸展-30°,両膝関節-80°.褥創治療歴は無く,現在ブレーデンスケール(以下BD)12点.現在まで行われてきたポジショニングは,30°傾斜クッション(68cm×23cm×14cm)を使用し左右の半側臥位を2時間毎交互に実施.<BR>【適切なポジショニング方法についての推論】<BR>BDは褥瘡発生危険点であり,適切な除圧が必要である.本症例の圧力分布は四肢・体幹の変形のない場合とは異なる可能性があるため,実際の圧力分布に基づいた有効な除圧法を適応する方が良いと考えた.<BR>【測定方法】<BR>ベッド上背臥位(姿勢A)及び30°傾斜枕を使用した左右半側臥位(各姿勢B‹右›,C‹左›)において,CONFORMatセンサー(ニッタ株式会社)を2枚使用し,対象者の頚部と骨盤部,大転子部分の範囲の圧分布を計測した.計測は,体動が無く静止した状態で行い,圧力が集中する部分の最大圧力を分析した.健常者(26歳女性)の同様の姿勢での圧力分布も計測した.本計測の手続きについては,院内での了承と対象者(ご家族)の同意を得た.<BR>【結果】<BR>患者の各姿勢では,健常者と比較しても,圧分布に左右差が見られた.姿勢Aで接触圧が高かったのは右肩峰38.2mmHg,左肩甲骨17.3mmHg,左腸骨14.2mmHg,右胸郭12.7mmHgであった.姿勢Bでは右肩峰39.8mmHg,右大転子24.7mmHg,右腸骨17.3mmHgが高く,姿勢Cでは左腸骨45.0mmHg,左大転子44.3mmHg,左胸郭20.3mmHgの接触圧が高かった.健常者と比較して,対象者では特に殿部の接触面積が小さく,骨突出部の圧力が高かった.<BR>【考察】<BR>脊柱の変形が,体幹とベッドとの接触部位と圧力の左右差に関連すると考えられる.左右の半側臥位では傾斜角度の変更やクッションの挿入方法に工夫が必要と考え,腸骨部,仙骨,大転子の圧集中を改善するためのクッション挿入法を考案した.<BR>【まとめ】<BR>重度要介護者では,四肢だけではなく体幹の形態・機能評価に基づいた適切なポジショニングを継続することが長期的な臥床生活のマネージメントにとって有効であろう.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), E3P3224-E3P3224, 2009
公益社団法人 日本理学療法士協会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543514880
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- NII論文ID
- 130004581410
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可