有料老人ホーム入居者における歩行能力と座位でのファンクショナルリーチテストとの関係

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【目的】要支援、要介護高齢者の歩行自立に関する要因や転倒予防に関する要因としてファンクショナルリーチテスト(以下、FRT)を用いた報告は多くなされているが、座位でのFRTに関する報告は少ない.移動能力を決定する因子として姿勢戦略は重要と考えられるが、要支援、要介護高齢者の場合には立位が困難であることも多い.そこで今回、有料老人ホーム入居者を対象に歩行能力と座位でのFRTとの関係を検討した.<BR>【方法】対象は、33の有料老人ホームに入居する高齢者のうち、座位が可能で、測定に際して自発動作が可能な者1043名とした.まず、歩行の可否を施設職員からの聴取により調査した.座位でのFRTでは、測定値とともに測定開始前とリーチ動作終了時の骨盤アラインメントの変化を見るため、矢状面から姿勢をデジタルカメラで撮影した.骨盤のアラインメントの変化を座位でのFRTの骨盤運動戦略とし、リーチ動作終了時の骨盤前傾の有無を確認した.得られた結果から、歩行可能群と車椅子使用群における座位でのFRT距離の平均値の差の検定を対応のないt検定を用いて行った.また、各群における骨盤前傾が出現する比率を算出した.<BR>【結果】補助具や介助による歩行可能群は909名、車椅子使用群は134名であった.座位でのFRT距離の平均値では、歩行可能群は31.5±12.0cmであり、車いす使用群の21.9±10.6cmに比べ有意に高値を示した(p<0.0001).ただし、各群の変動係数はそれぞれ38%、48.4%と高値を呈した.骨盤運動戦略では、歩行可能群のうち骨盤の前傾を認めた者は94.2%(856名)、骨盤の前傾を認めなかった者は5.8%(53名)であった.同様に、車いす使用群ではそれぞれ59.0%(79名)、41.0%(55名)であった.<BR>【考察】今回の結果から、座位でのFRTは移動能力と関連していることが明らかとなった.したがって、要支援、要介護高齢者の歩行能力を決定する因子として座位でのFRTが有用であるということが示唆された.しかし、その結果はばらつきが大きく、座位でのFRTの結果のみで判断するには注意を要すると考えられた.一方、座位でのFRTにおける骨盤運動戦略では,歩行可能群のほとんどで骨盤前傾を認めた.これより、座位でのFRTにおいて骨盤が連動して運動できることは歩行にとって有利であることを示す可能性が考えられる.以上のことから、座位でのファンクショナルリーチテストは歩行能力を知るための一つの指標になりうることが明らかとなったが、テストに際しては骨盤前傾運動の有無を確認することが必要であることが示唆された.

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Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543524736
  • NII Article ID
    130004581390
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.e3p3203.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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