市販の炭酸泉入浴剤の保温効果について
書誌事項
- タイトル別名
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- ―部分浴による温熱効果―
説明
【目的】<BR>温熱療法施行時に入浴剤は、頻繁に使用されているが、その入浴剤の身体に及ぼす影響は、未知で使用されるケースが大半である.そこで、今回、単純泉に市販の炭酸泉入浴剤を使用した部分浴と単純泉のみの部分浴を施行し、身体への保温効果について比較検討したので報告する.<BR>【方法】<BR>対象は、健常若年男性10名(平均年齢22.4±2.7歳)である.<BR>部分浴の方法は、室温を19°Cに設定した部屋にて、充分な安静座位後に41°Cの単純泉に右前腕部の部分浴(単純泉浴)を20分間行い、さらに30分後まで経過観察した.市販の炭酸泉入浴剤を使用した部分浴は、日を変えて、その使用方法に沿って単純泉浴と同様に行った.なお単純泉浴と炭酸泉浴はランダムに施行した.測定項目は、脈拍数、血圧、右上腕の皮膚血流量、舌下温(深部温)、表在温(額、頚部、左上腕、腹部、左大腿、左足背、左足趾)、Borgの主観的作業強度を温感に改変して測定した.測定は部分浴前と部分浴20分経過時に行った.統計処理は、主観的温感強度以外は、対応のあるt検定で行ない、主観的温感強度は、ノンパラメトリック検定(対応のあるWilocxon T検定)で行った.なお本研究は、本大学の倫理審査の承認を得て行った.<BR>【結果】<BR>深部体温は、20分間の単純泉浴で0.26°C、炭酸泉浴で0.41°Cと上昇し、浴方法の違いで有意差(p<.05)を認め、浴後30分経過でも炭酸泉浴は0.29°Cの上昇を保ち、有意に単純泉浴より高い結果となった.部分浴の温感でも、単純泉浴より炭酸泉浴の方が有意に高かった(p<.05).表在温の測定部位では、左足趾が最も大きく温度が上昇したが、部分浴の方法による差は認めなかった.なお、脈拍や血圧では、部分浴前後および浴後30分経過時で大きな変化を認めず、部分浴の方法の違いによっても有意差は認めなかった.<BR>【考察】<BR>炭酸泉浴の深部体温への効果は単純泉浴より有意に高く0.4°C上昇し保温効果も優れていた.さらに、温感も単純泉浴より炭酸泉浴が有意に高かったことから、市販の炭酸泉入浴剤の使用は、単純泉より客観的にも主観的にも、より温熱効果を上昇させることが明確に確認された.身体に対する負担では、単純泉浴と炭酸泉浴の部分浴では心拍数と血圧に大きな変化を認なかったことから、部分浴の身体に対する負担は非常に軽かったと考える.以上のことから、急性期の循環器疾患に対する部分浴は、市販の炭酸泉入浴剤を用いることで温熱効果が向上し、早期から安全に施行できると考える.<BR>【まとめ】<BR>健常若年男性に対して、単純泉による部分浴と市販の炭酸泉入浴剤を使用した部分浴を施行し、その比較を行った.その結果、市販の炭酸泉入浴剤を使用した部分浴が、より深部体温を上昇させ、保温効果もあり、温感も高かった.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), F3P3587-F3P3587, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543532544
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- NII論文ID
- 130004581452
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可