中心性頸髄損傷症例の長期経過
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- 小林 功
- 医療法人三和会わたなべ医院
書誌事項
- タイトル別名
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- ―症例報告―
説明
【目的】中心性頸髄損傷はSchneider(1954)により報告された不全型頸髄損傷である.理学療法に関する教科書においては脊髄中心部の損傷で予後良好で下肢機能は回復すると記載されている場合が多い.しかし、下肢機能の回復に関して臼井(1981)は1型、2型、3型に分類し、1型、2型は問題ないが3型は予後が劣ると報告している.また、猪俣らによるとフランケル分類にて入院時D0:72名が6ヵ月後D1:1名、D2:17名、D3:46名、D4:8名と報告している.しかし、その後の経過については不明である.本邦では中心性頸髄損傷の報告は入院中のものが多く、在宅生活を含め長期的な経過を報告したものは少ない.そこで今回、臼井らの分類にて2型と考えられる症例に対し2年10ヶ月間経過を追うことができたので報告する.<BR> 【症例】症例においては本研究に対して同意を得ている.2006年1月転倒にて中心性頸髄損傷受傷(損傷高位C6).急性期病院にてステロイドパルス療法施行.2ヶ月後リハビリテーション病院へ転院.6ヶ月後自宅退院し当院訪問リハビリテーション開始となる.発症後6ヶ月、1年、1年6ヶ月、2年、2年10ヶ月と経過を追った.測定項目はASIA、フランケル分類、FIM、10M歩行時間(最大)、6分間歩行検査、STEFとした.<BR>発症後6ヶ月目:ASIA:D(motor score右35点、左45点/損傷高位C7)、フランケル分類:D2、FIM:116点、10M歩行時間(最大):12.63秒/22歩、 6分間歩行検査:239 M(ロフストランド杖).発症後1年目:ASIA:D(motor score右39点、左45点/損傷高位C8)、フランケル分類:D2、FIM:121点、10M歩行時間(最大):8.62秒/18歩、6分間歩行検査:340M(T字杖)、STEF右:55点・左85点 .発症後2年10ヶ月目:ASIA:D(motor score右41点、左49点/損傷高位C8)、フランケル分類:D2、FIM:123点、10M歩行時間(最大):6.60秒/16歩、6分間歩行検査:420M、STEF右:76点・左93点.<BR>【リハビリテーション介入】週2~3回の訪問リハビリテーション(50分~60分/1回)手指関節可動域運動、手指筋力強化運動、低周波治療、基本動作練習(屋外歩行練習を含む)、巧緻動作練習、自宅でのトレーニング、日常生活関連動作紹介等を実施.<BR>【考察】長期に経過を追うことで損傷高位C6からC8と運動麻痺の改善と上肢能力・移動能力の向上が認められ日常生活が自立していることが観察された.ASIA muscle grade2は、1年後3に改善したがその後は変化なし.しかしASIA muscle grade 3は長期にわたって4・5と改善している.しかしフランケル分類では猪俣の報告の通り、6ヶ月以降変化はなかった.6分間歩行検査や10M歩行時間についての長期の報告はみあたらないが2型症例の下肢機能については長期にわたり能力の改善がはかれる症例もいる.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), E3P3243-E3P3243, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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キーワード
詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543546368
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- NII論文ID
- 130004581428
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可