脳卒中片麻痺患者における歩行時内反尖足の出現に影響する因子
書誌事項
- タイトル別名
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- 腱反射または動作時筋緊張の異常,いずれの影響か?
説明
【目的】<BR> 脳卒中片麻痺患者の足関節内反尖足は,筋緊張の異常,特にその亢進によって生じる.本研究の目的はこの内反尖足の原因となる筋緊張異常が,一般的に筋緊張の評価として行われる腱反射などの痙縮の程度と,動作に伴う筋緊張(以下,動作時筋緊張)異常の程度のどちらにより影響を受けるかを明確にすることである.<BR>【方法】<BR> 対象は介助または自立にて歩行の可能な脳卒中片麻痺患者とした.麻痺が軽度で,かつ重度の深部感覚障害を認める症例は,特有の筋緊張異常を呈するため,また腱反射が減弱または消失している症例は,弛緩性の影響で歩行時の足部接地パターンが変化することも考えられるため対象から除外した.21例の対象の平均年齢は61±10歳で,下肢Brunnstrom Stageは3:2例,4:11例,5:3例,6:5例であった.麻痺側足関節の膝伸展位での背屈可動域は平均12度(5~25度)であった.<BR> 動作時筋緊張の測定として,あらかじめ対象者を背臥位にて安静にさせ,麻痺側の足関節を0度位まで背屈させた時の抗力を,用手筋力計を用い3回測定し,その平均を体重で除した値を安静時抗力とした.さらに非麻痺側下肢に最大努力の50%の負荷を加えSLRを行わせ,その際,麻痺側に生じる不随意的な底屈運動の力を足関節0度位にて同様に3回測定し,その平均を体重で除した値を動作時抗力とした.動作時抗力から安静時抗力を減じて抗力増加量を求め,これを動作時筋緊張の指標とした.麻痺側アキレス腱反射の程度は正常,亢進,著名な亢進の3段階で判定した.<BR> 歩行時における足部接地パターンを目視にて確認し,踵から接地する者を「内反尖足なし」,足部前側または外側から接地する者を「内反尖足あり」と分類し,「内反尖足あり」群と「内反尖足なし」群について,抗力増加量および腱反射の程度を比較した.なお,統計学的検討にはMann-Whitney検定を用いた.<BR>【結果】<BR> 抗力増加量の中央値は「内反尖足あり」群(14例)では4.3%体重(0.8~14.8%体重),「内反尖足なし」群(7例)では1.3%体重(0.8~4.6%体重)で,統計学的に「内反尖足あり」群の抗力増加量が有意に大きかった.腱反射の程度は「内反尖足あり」群では正常:1例,亢進:2例,著名な亢進:11例,「内反尖足なし」群ではそれぞれ1例,3例,3例で,内反尖足の出現と腱反射の程度には有意差を認めなかった.<BR>【考察】<BR> 脳卒中片麻痺患者の筋緊張異常は,円滑な動作を妨げる要因となる.筋緊張は一般に腱反射や被動性など痙縮の程度により評価されることが多い.しかし,下腿三頭筋の痙縮の程度は片麻痺患者の歩行障害に直接影響を及ぼさないとの報告もあり,理学療法の効果を判定する筋緊張の指標についての検討が必要と言われている.今回の結果から,腱反射よりむしろ動作時筋緊張の程度が片麻痺患者の歩行時内反尖足の出現に影響しており,理学療法の効果判定に有効な指標と考える.<BR>
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2006 (0), B0750-B0750, 2007
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543563136
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- NII論文ID
- 130005013759
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可