立位での一側下肢への荷重時における体幹後傾に伴う股関節伸展角度の変化が荷重側股関節外転筋群の筋電図積分値に与える影響

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抄録

【はじめに】<BR> 臨床において股関節外転筋群の筋力低下により、トレンデレンブルグ徴候を呈する症例の理学療法を経験する.このトレンデレンブルグ徴候を評価すると、立脚初期や立脚中期以降に生じる等そのパターンは多様である.正常歩行にて立脚側股関節では運動が絶えず生じている事から、荷重時での股関節肢位の変化による荷重側股関節外転筋群の筋活動について検討が必要と考えた.我々は先行研究にて一側下肢荷重時における体幹前傾に伴う股関節屈曲角度の変化が荷重側股関節外転筋群の筋電図積分値に与える影響について報告した.今回は一側下肢荷重時における体幹後傾に伴う股関節伸展角度の変化が荷重側股関節外転筋群の筋電図積分値に与える影響について検討し、若干の知見を得たので報告する.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は健常男性7名、平均年齢は29.0歳であった.まず安静立位から両足底を接地させたまま側方へ体重移動させ、一側下肢へ体重の95%を荷重した状態を開始肢位とした.そして荷重側の大腿筋膜張筋(以下TFL)・中殿筋(以下GME)・大殿筋上部線維(以下GMU)の筋電図を5秒間、3回測定した.次に開始肢位から体幹後傾に伴う股関節伸展角度を5度、10度と変化させ、各課題の筋電図を測定した.この時、測定時の各課題における荷重側足底の前後荷重量は、開始肢位と同様となるように規定した.また体幹・骨盤の回旋と側方傾斜はさせず、体幹については中間位とした.さらに両膝関節は屈曲を起こさないよう指示した.この時、体幹後傾に伴う殿部の前方への偏倚は許可した.尚被験者には本研究の趣旨を説明し同意を得た.<BR>【結果と考察】<BR>GMEとGMUの筋電図積分値は股関節伸展角度の増大に伴い減少し、TFLの筋電図積分値は股関節伸展5度にて増加を認め、伸展10度では減少した.本課題では股関節伸展角度の増大に伴い、股関節には従重力方向へ伸展しようとする力が生じると考えられる.これに伴いGMEとGMUについては股関節伸展作用としての関与が低下し、筋電図積分値に減少を認めたと考える.またTFLについては股関節伸展角度の増大に伴い、これを制動するために股関節屈曲作用がより必要となる事で、伸展5度において筋電図積分値に増加を認めたと考える.そして、股関節伸展10度においてTFLの筋電図積分値が減少した事については、股関節伸展・内転を制動する腸骨大腿靭帯の関与に伴う、TFLの股関節屈曲・外転作用の低下によるものと考える.さらに本課題は骨盤が非荷重側へ下制しようとする力が生じる事が考えられる.そしてこれに対する制動として股関節外転筋群が関与すると考えられるが、今回の結果より股関節伸展角度の増大に伴い、TFLの筋電図積分値が股関節伸展5度において増加している事から、この肢位での骨盤の非荷重側への下制に対する制動については、TFLがより関与していると考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P3029-A3P3029, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543618304
  • NII論文ID
    130004580222
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p3029.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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