支持基底面の変化が重心動揺に与える影響
書誌事項
- タイトル別名
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- ―足関節外果と重心線の位置関係の再確認―
説明
【はじめに】重心とは,「物体の各部分に働く作用と等価な合力の作用すべき点」として力学上考え出された理論的な点であり,重心線とは,重心を通る垂直線である.ヒトが平衡状態にある静止姿勢の際,重心線が通る場所は,「耳垂→肩甲骨の肩峰→大転子→膝関節の前面(膝蓋骨の後面)→足関節の外果より5~6cm前方」と言われている.リハビリテーションに係わる者にとって「重心」は非常に重要である.<BR>【目的】今回我われは,物体に働く重心が支持基底面の変化に伴いどのように変化するかということを,足関節外果と重心線の位置関係を確認すると共に,重心動揺計を用いて考察したので報告する.<BR>【対象】健常な学生5名(平均年齢23.6±4.66歳).対象者にはデータの採り方と内容を説明した後,同意を得た.<BR>【方法および条件】1)重心動揺計上(アニマ社グラビコーダGS-10)で足長中心と重心動揺計の座標中心を正確に一致させ,2m前方の印を注視し,不動とする.2)外果の頂点から重心動揺計に垂線を下ろし,X軸までの距離(cm)を計測し,外果と重心線を算出する.3)片脚起立時は,軸脚の足長中心を重心動揺計の座標中心に合わせた後,Y軸に合わせて平行に立位をとる.4)計測時間は30秒とする.<BR>【結果ならびに考察】重心線と外果の位置を算出した結果,被検者5人の平均は5.7cmであり,外果の5.7cm前方に重心が落ちていることが確認された.これは一般的に言われている重心の位置(外果から5cm~6cm)と一致する.支持基底面の変化に伴う重心動揺の変化では,ロンベルグ肢位のほうがマン肢位に比較して重心動揺距離,外周面積ともに数値が大きかった.これは前者のほうが支持基底面積が狭くなったからであると考える. また,両脚起立時と片脚起立時の比較においては重心動揺の変化が如実に現れ,重心動揺距離,外周面積とも数値に2~3倍の差が出現した.これは支持基底面の変化が安定性に強く影響していることを示唆している.<BR>【まとめ】今回,物体の安定に必要な要因の変化にともなって重心が動揺することが明らかになった.特に支持基底面を変化させると重心の動揺が顕著に現れた.また,ヒトの静止立位時の重心線が落ちる場所は,一般に言われている場所と大差ないことも証明された.理学療法を実施するうえで,患者様にどのような肢位をとってもらうことが一番リスクの少ない肢位かを考えることは理学療法士にとって重要である.今後この基本的な知識を臨床に応用していく必要があると考える.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A3P3031-A3P3031, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543619712
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- NII論文ID
- 130004580224
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可