股関節内外旋肢位の違いによって仙骨部体圧は変化するか

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抄録

【はじめに】<BR>褥瘡の有病率は、入院患者に比べ在宅療養者が高く、褥瘡の発生部位として仙骨部の割合が全体の5~6割を占めていると報告された.このことから、理学療法士が退院前に患者や家族に対して姿勢や体圧分散寝具などの使用について指導をする必要がある.在宅療養者は入院時に比べ活動量の低下から、寝たきりになる可能性が高く、下肢に拘縮を併発する可能性も高い.臥床時間が長いと、布団によって股関節が強制的に外旋位や内旋位になることがあり、股関節内外旋肢位と仙骨部体圧値の変化を把握することは重要であると考える.しかし、股関節肢位と仙骨部体圧値の報告は少ない.本研究の目的は、股関節肢位の違いが仙骨部体圧値に及ぼす影響を明確にすることである.<BR>【対象と方法】<BR>対象は、研究目的を十分に説明し同意した健常成人23名(男性10名、女性13名、平均年齢23.2±3.9歳、平均身長163.5±7.6cm、平均体重60.8±10.4kg、平均BMI22.7±3.9)であった.方法は、シーツを被せたPARAMOUNT BEDの普通マットレスを使用し、両上肢を体側に置いた安静背臥位で行った.股関節肢位は脱力位、検者が他動にて固定した強制外旋位、強制内旋位とし、それぞれの仙骨部体圧値を測定した.測定は、順不同に行い、簡易体圧測定器セロ(CAPE社製)にて2回測定し、その平均値をデータとして用いた.データの分析には統計ソフトSPSSを使用し、対応のある一元配置分散分析を行い、多重比較にはBonferroniの検定を用いた.有意水準を5%未満とした.<BR>【結果】<BR>各肢位での仙骨部体圧値は、脱力位80.7±25.2mmHg、強制外旋位76.4±27.5 mmHg、強制内旋位92.8±27.5 mmHgであり、強制外旋位が最も低い圧値を示した.強制内旋位は脱力位と強制外旋位と比べ有意に圧が高く、各肢位間において有意な差を認めた.<BR>【考察】<BR>本研究の結果より股関節の肢位によって仙骨部体圧は変化することが示唆された.その要因として骨盤の傾斜角度の影響が考えられる.骨盤の後傾は、骨盤とマットレスとの接触面を広げ、骨盤の前傾は、腸骨部が腹側へ回転することにより、骨盤と床との接触面を狭くすることで、正中仙骨稜での支持となる.つまり骨盤の後傾は、仙骨部の圧を低下させ、前傾は、その圧を高くする.股関節強制内旋位は、坐骨大腿靱帯による影響で骨盤を前傾位にすることが推測でき、そのことが仙骨部の圧を高める要因であったと考えられた.これにより股関節外旋位は内旋位や安楽位に比べ体圧値が低くなるため、在宅療養者や退院時に指導をする必要があると考えた.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P3062-A3P3062, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543662848
  • NII論文ID
    130004580254
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p3062.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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