ジャンプパフォーマンスと膝関節周囲筋の筋機能との関係

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抄録

【目的】リハビリテーションにおいて,膝関節疾患患者に対する評価で前方ジャンプテストが多く使用されている.前方ジャンプは180 deg/secにおける大腿四頭筋の最大トルクと相関するとの報告があるが,一方ではパフォーマンス(ジャンプ,ダッシュなど)と膝関節の等速性運動における筋力との相関はないとの報告もあり,未だ統一した見解は得られていない.また,ジャンプと大腿四頭筋との関係についての報告は多いが,ハムストリングスに関する報告は少ない.そこで,本研究は,片脚での垂直および前方ジャンプパフォーマンスと大腿四頭筋およびハムストリングスの等速性運動における筋機能との関係について調査することを目的とした.<BR>【方法】対象者は腰部および下肢に整形外科疾患の既往のない健常成人30名(男性15名,女性15名),年齢24.8±2.4歳,身長1.65±0.09 m,体重58.2±9.7 kg,下肢長0.84±0.05 mであった.全ての対象者に研究の内容を説明し,同意を得た上で測定を実施した.測定はウォーミングアップ,ジャンプテスト,等速性筋力テストの順で行った.ウォーミングアップはエルゴメーターで行った.垂直ジャンプテストは垂直ジャンプ測定器(ジャンプ‐MD,竹井機器)を用いて測定した.前方ジャンプテストは床面に貼りつけたメジャーを用いて測定した.ジャンプテストは左右2回ずつ行い,左右それぞれの最大値を下肢長で除したジャンプ比を代表値とした.筋機能の評価は測定機能付自力運動訓練装置(combit‐CB2+,ミナト医科学)を用いて測定し,60 deg/secで5回,180 deg/secで10回,最大努力による左右それぞれの等速性膝関節伸展および屈曲運動を行った.各々の角速度で最大トルク,最大トルクの体重比,最大パワー,総仕事量を測定した.統計解析はSpearmanの順位相関係数を用い,危険率5 %未満をもって有意とした.<BR>【結果】全対象における左右を合計した垂直および前方ジャンプ比と大腿四頭筋およびハムストリングスとの関係では,垂直ジャンプ比と60 deg/secでの膝関節伸展の最大パワーおよび総仕事量以外,すべて有意な正の相関があった.しかし,男女別でのジャンプ比と筋機能の関係では,相関した項目はすべて負の相関があった. <BR>【考察】男女別でのジャンプパフォーマンスと筋機能との間に正の相関がなかったことから,片脚での垂直および前方へのジャンプパフォーマンスには,膝関節周囲筋の大腿四頭筋およびハムストリングスの関連性は少なく,むしろ個人の運動スキル(ジャンプのタイミング,フォーム)および運動歴(運動の種類,経験年数,競技レベル)の影響が大きいと考えられる.今後は,運動パフォーマンス時における各筋群の作用,さらに運動スキルおよび運動歴によるパフォーマンスの違いについて検討する必要がある.<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2006 (0), A0652-A0652, 2007

    公益社団法人 日本理学療法士協会

被引用文献 (1)*注記

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