肩関節の水平内転制限に対する肩甲上腕関節後方関節包ストレッチの即時効果
書誌事項
- タイトル別名
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- 無作為化対照研究
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説明
【目的】 肩甲上腕関節の水平内転および内旋制限はインピンジメントの要因とされ(Warner 1990、Morrison 1997)、その原因として肩甲上腕関節後方関節包のタイトネスが指摘されてきた(Pappas 1985、Warner 1992、Tyler 2000)。後方関節包の伸張法として肩関節内旋や水平内転ストレッチ(Wilk 2002、Johansen 1995)が提唱されているが、その効果について詳細な検証はされていない。本研究では、著者らが提唱する四つ這い位での後方関節包ストレッチ法(All-fours Posterior Stretch: APS)の有効性を検証することを目的とする。<BR>【仮説】 APS法は従来の内旋ストレッチ(IRS)法よりも後方関節包の伸張に効果的である。<BR>【対象】 対象者の取込基準は健常男性、18-30歳であり、除外基準は女性、囚人、医学的問題として肩関節の疼痛および疾患、内科的リスク、精神障害、コミュニケーション障害のある者、とした。ヘルシンキ宣言の精神に基づき作成された同意書に署名した14名の被検者は、無作為に2群に割り付けられた。<BR>【方法】 本研究は2群による無作為化対照実験であり、A群はAPS法を、B群はIRS法を実施した。観察因子は肩甲上腕関節水平内転可動域であり、その計測にはTyler変法(側臥位での上腕傾斜角を計測)を用いた(Tyler 1999)。測定は介入直前と介入直後(5分以内)に盲検化された測定者が実施した。統計学的検定にはF検定に基づくt検定を用い、多重検定の処理としてBonferroni補正を実施した。なお、補正前の有意水準をp<0.05とした。<BR>【結果】 A群(APS法)による可動域改善は44.6±13.7°(p=0.00014)、B群(IRS法)による可動域改善は11.7±9.6°(p=0.018)であった。両群の比較ではA群が有意に大きな改善が認められた(p=0.00011)。<BR>【考察】本研究の結果、APS法の著明な即時効果が示された。この結果はAPS法が四つ這い位で上肢に荷重することにより、後方関節包を直接伸張する効果が得られるためと考えられる。本研究の問題点として、統計学的パワーの不足や結果の一般化の制限が挙げられるが、再現性の高い計測方法を用い、盲検化無作為化対照研究のデザインを用いた点などを考慮すると信頼性の高い研究といえる。以上により研究仮説は支持されたと結論付けられる。現在、APS法を用いた臨床研究が進行中である。<BR>【まとめ】健常者において、APS法は従来の内旋ストレッチ(IRS)法よりも後方関節包の伸張に効果的である。
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2007 (0), C0542-C0542, 2008
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543761408
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- NII論文ID
- 110006800099
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- NII書誌ID
- AN10146032
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可