WOMACに準ずる日本語版膝機能評価法(準WOMAC)を用いた人工膝関節置換術後患者の膝関節機能評価

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【はじめに】国内において人工膝関節置換術(TKA)後患者を対象としたWOMAC(Western Ontario and McMaster Universities osteoarthritis Index)を用いた報告は少なく、術前、退院時、退院後の経時的変化を調査した報告はない。そこで我々はTKA術後6ヶ月以上の患者を対象にWOMACに準ずる日本固有の文化・生活様式を反映させた日本語版膝機能評価法(準WOMAC)を指標に、膝関節機能を経時的に調査し、主観的評価である準WOMACが客観的評価やパフォーマンス評価と比較し、どのような特性があるか検討を行った。<BR>【対象と方法】対象は当院にてTKAを施行し術後6ヶ月以上経過した患者11名(男性3名・女性8名、平均年齢76.2歳)であった。対象者には本研究の趣旨を説明し文書により同意を得た。準WOMACとJOA score(JOA)を用い、術側膝関節における術前、退院時(平均47日)、退院後(平均11.1ヶ月)の点数を調査し比較した。準WOMACは自由記述としJOAは聞き取り調査及び直接評価とした。準WOMACの退院時調査ではアンケート実施時の状態を回答させた。また術前と退院時のパフォーマンス評価として10m歩行テスト(10GT)とTimed Up and Go test(TUG)を実施した。統計解析はSPSSver15.0を使用し、JOAと準WOMACの経時的変化を一元配置分散分析(その後の検定はTukey)で、10GTとTUGには対応のあるt検定で検定し、有意水準は5%未満とした。 <BR>【結果】準WOMACでは術前平均119.5±46.5点、退院時165.3±22.3点、退院後174.8±18.0点であり、術前と退院時では有意差が認められたが、退院時と退院後間には認められなかった。JOAでは術前平均58.1±11.6点、退院時68.6±10.7点、退院後77.2±7.2点であり、術前と退院時間には有意差が認められなかったが、退院時と退院後間では認められた。準WOMAC とJOA両者において術前と退院後間では有意差が認められた。10GTでは術前14.4±2.8秒、退院時14.4±3.3秒、TUGでは術前14.7±1.4秒、退院時17.5±5.3秒であり有意差は認められなかった。<BR>【考察】TKA術後患者の膝関節機能を見る際、術前と比較して準WOMACは退院時の改善を、JOAでは術後6ヵ月以上経過時の改善を特徴的に示した。退院時は患者自身が手術による疼痛緩解と運動療法による機能改善の変化を最も実感する時期であり、パフォーマンス評価は改善されていないにも関わらず、主観的評価である準WOMACでは高得点を示したと考えられる。準WOMACにおける退院時の評価は、環境の整備されている病院内での生活を基準に判断するため、実際の機能よりも高めに評価していたものと推測できる。準WOMACを指標として用いた場合、術後早期は膝関節機能の検出力が低く満足度や主観的感情が影響した結果を示すために、他の客観的評価やパフォーマンス評価と比較して高値を示す特性が明らかになった。

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C0535-C0535, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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