拘束性換気障害患者一症例のコンディショニングについて
説明
【目的】呼吸リハビリテーションにおいて植木らはコンディショニング、ADLトレーニング、全身持久力・筋力トレーニングが有効であると提唱している.閉塞性・拘束性換気障害の運動療法においてコンディショニングについての報告は少ない.当院ではこのコンディショニングについて単に胸郭の可動性改善を目的にしたものでなく、二次的に低下している体幹機能や立位バランスの改善を含め、ボバース概念に基づいた評価治療を実践している.今回拘束性換気障害を主症状とする患者に対し体幹機能に着目して治療を行った結果、変化が得られたので報告する.<BR>【方法】症例はインフォームドコンセントにて同意が得られた70歳代女性、診断名は肺結核後遺症.45年前に肺結核にて右上葉切除、右第2~4肋骨切除、胸郭形成術施行.3年前から歩行時に呼吸苦出現.外来にて理学療法開始(週1回×12回).施行前の呼吸機能検査では%VC 32.9、FEV1% 91.1であった.目標は長距離歩行での呼吸苦軽減、歩行速度の上昇とした.問題点は、1.右僧帽筋中下部線維、菱形筋、前鋸筋、広背筋の弱化による右肩甲帯の下方偏移、2.斜角筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋上部線維、大胸筋、小胸筋、上腕二頭筋長頭の筋短縮、3.呼吸補助筋の過剰収縮、4.立脚期での体幹筋の活動が乏しく、体幹右側屈、股関節屈曲・内転での代償パターンとした.治療では徒手介入にて呼吸にあわせ僧帽筋中・下部線維、菱形筋、前鋸筋、広背筋の柔軟性や筋アライメントを改善し、一側支持脚での体幹筋の活動を促しながら、筋力・持久力トレーニングへとつなげていった.<BR>【結果】代償的な姿勢パターンは軽減し体幹の筋活動が得られやすくなった.胸郭周径差は改善、6分間歩行距離351m→530m、1回換気量0.21l→0.32l、肺活量0.85l→1.05l、SGRQはsymptom89.2→60.7、activity48.2→34.8へと改善を認めた.<BR>【考察とまとめ】肺結核による肺実質の粘弾性低下と右上葉切除により肺容量低下し、肺コンプライアンスは低下していた.さらに肺の拡張制限により呼吸筋は短縮し胸郭コンプライアンスも低下していた.また右第2~4肋骨切除による骨・筋のアライメント不良により、右肩甲帯周囲筋弱化、肩甲帯の下方偏移が引き起こされ、呼吸補助筋を過剰に収縮し代償的な姿勢をとっていた.これがさらに立位バランスなどに必要な体幹筋の二次的な不活性を引き起こし胸郭の可動性を低下させていた.単に胸郭の可動性改善だけでなく、二次的に低下した体幹機能の改善に着目し治療を行った.結果、胸郭拡張差、6分間歩行距離、一回換気量、肺活量、QOLに改善がみられた.姿勢と呼吸運動の調整、代償動作の軽減により体幹機能を改善し再学習することが症例の呼吸機能の改善に重要であった.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), D3P2501-D3P2501, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543799936
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- NII論文ID
- 130004581100
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可