理学療法士の手洗いは適切か?

DOI
  • 横山 浩康
    JA埼玉県厚生連熊谷総合病院リハビリテーション科 JA埼玉県厚生連熊谷総合病院感染制御チーム
  • 渡辺 栄子
    JA埼玉県厚生連熊谷総合病院看護部 JA埼玉県厚生連熊谷総合病院感染制御チーム
  • 坂本 順子
    JA埼玉県厚生連熊谷総合病院看護部 JA埼玉県厚生連熊谷総合病院感染制御チーム
  • 西山 秀木
    JA埼玉県厚生連熊谷総合病院整形外科 JA埼玉県厚生連熊谷総合病院感染制御チーム

抄録

【はじめに】<BR> 院内感染は時として病院の根幹を揺るがすほどの影響を及ぼす.特に患者と密に接する機会の多い我々理学療法士は、無意識のうちに接触感染の媒体となりうる可能性が非常に高い.しかし、目に見えない菌から身を守るという意識を定着させることや、煩雑な日常業務において流水による手洗いを厳密に行うことは困難な現状である.しかし、厚生労働省では、アルコール性擦式消毒剤(以下擦式消毒剤)使用での15秒以上の手洗いを推奨しており、煩雑な日常業務中でも無理なく導入できると考える.実際に15秒以上での擦式消毒剤での手洗いは、一回の使用量が3cc以上であるとされている.そこで本研究は、毎月、当院感染制御チーム(以下ICT)で調査を行っている擦式消毒剤の使用量を期間ごとに抽出し、一患者あたりの平均使用量の検討を行い、当院理学療法士の手洗いの実際を調査した.<BR>【方法】<BR> 対象期間は平成18年下期から平成20年上期とした.擦式消毒剤を一患者あたりにスタッフが使用した平均使用量を算出し、各期間の値を比較した.統計処理は対応のないt検定を行い、有意水準を5%未満とした.<BR>【結果】<BR> 算出された擦式消毒剤の平均使用量は、1)平成18年下期0.33±0.03cc、2)平成19年上期0.49±0.11cc、3)平成19年下期0.63±0.14cc、4)平成20年上期0.9±0.12cc、であった.統計処理により有意差(P<0.05)を求めた結果、2)、3)を比較した結果以外は、全て有意差を認めた.<BR>【考察】<BR> 本研究の結果から、当院理学療法士の擦式消毒剤の使用量は厚生労働省の推奨する使用量に至らなかった、しかし、各年度の使用量の推移から、自分の清潔が患者を守るという意識が高まっていると考える.臨床での感染予防は、疾患の分類を知ることではなく、感染経路や患者の状態を知ること、医療者である自分自身の管理が重要であると考える.その実践的な感染対策教育は各施設による部分が多く、研究に至るケースは理学療法分野において未だ少ないと考える.本学会の検索エンジンにおいて、「感染」で検索した結果、102件であり、関連職種と比較してもまだまだ意識が低いと思われる.<BR>本研究では、手洗いについてのみを調査したが、手洗いだけが感染を予防する手段とは言い切れない.今後は、患者を取り巻く環境や手洗い以外の標準予防策にも着目し、感染予防への意識を高めていこうと考える.

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2008 (0), A3P2170-A3P2170, 2009

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390282680543823104
  • NII論文ID
    130004580194
  • DOI
    10.14900/cjpt.2008.0.a3p2170.0
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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