加齢における筋力低下の要因の検討
書誌事項
- タイトル別名
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- ―握力の比較―
説明
【目的】<BR> 年齢が高くなると筋力は低下する.この原因としては筋横断面積の減少,筋線維タイプの変化などの形態的要因と運動単位動員数の減少,活動電位発射頻度の低下などの神経的要因があるとされている.主に加齢による筋力低下が形態的要因に関与していれば,筋量が等しい高齢群と若年群の筋力は同等になると考えられた.そこで今回,身長・前腕筋量・上腕筋量・上肢筋量・全身の総筋肉量に有意の差がない若齢者と高齢者を対象に,握力の比較を行い,加齢に伴う筋力低下の要因を検討した.<BR><BR>【方法】<BR> 対象は20代と60代の健常男性が各10名で計20名であった.対象者には本研究の目的と趣旨および測定方法などについて説明し,同意を得た.身体組成の測定開始の際に,激しい運動直後・食後および大量の水分摂取後2時間以内・起床後30分以内ではないことを確認し,ベッド上で仰臥位による5分以上の安静をとった.測定には生体電気インピーダンス方式体組成計(Physion MP:フィジオン社製)を用いた.測定に際し四肢に計12箇所の電極を貼付した.電極貼り付け部位は統一し、それを指標として四肢長を計測した.握力は,握力計(アナログ握力計 T.T.K5001 GRIP-A,竹井機器)を最大の力で握ってもらい,3回実施し最大値を採用した.<BR><BR><BR>【結果】<BR> 若年群と高齢群の左右の上腕長・前腕長・総筋量・上肢筋量・上腕筋量・前腕筋量,利き手・非利き手の握力には有意差は認められなかった.以下の結果には利き手の握力を採用することとした.若年群と高齢群の利き手の握力と総筋量・上肢筋量・上腕筋量との関係では両群ともに有意差は認められなかった.前腕筋量は若年群では0.5±0.1kg,高齢群では0.5±0.0kgであった.これに対し、握力は若年群が43.1±3.4kgで高齢群が37.4±7.2kgであり、両者に有意の差が認められた.握力と前腕筋量との間に若年群のみ有意な相関(r=o.69,p<0.05)が示された.<BR><BR>【考察】<BR>筋量が同等の2群間の握力平均を比較したところ,利き手の握力だけは高齢群のほうが5.7kg下回った.このことから,高齢群においては加齢における筋力低下が生じていると考えられ,また筋力に関与しているのは筋量などの形態的要因だけではなく,その他の要因も影響を及ぼしていることが考えられた.筋量と筋力の相関関係では,若年群において前腕筋量と握力のみに相関が認められたが,高齢群においては優位な相関はみられなかった.これは,若年群の筋力には形態的要因がより強く影響しているが,高齢群の筋力はその他の影響も受けているためと思われ、若年群より高齢群の筋力が低下していたのは,形態的要因だけではなく神経的要因が関与しているためと考えられた.
収録刊行物
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- 理学療法学Supplement
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理学療法学Supplement 2008 (0), A3P3007-A3P3007, 2009
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390282680543831936
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- NII論文ID
- 130004580201
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可