足関節外側靭帯損傷者における足部内転運動の固有位置覚

  • 神里 巌
    福原整形外科医院リハビリテーション科 広島大学大学院保健学研究科
  • 浦辺 幸夫
    広島大学大学院保健学研究科
  • 片平 慎二
    福原整形外科医院リハビリテーション科
  • 安達 伸生
    広島大学大学院医歯薬総合研究科(整形外科)
  • 福原 宏平
    福原整形外科医院リハビリテーション科

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説明

【目的】足関節外側靭帯損傷はスポーツ活動のなかで頻繁に起こる外傷の1つであるが,損傷された組織の回復が十分でないままスポーツ活動を再開してしまうことも多く,その結果として再発することもしばしばである。再発予防のためには足部の回復状態を評価する指標が必要であるといえる。近年,予防の観点から固有感覚が注目されているが,足関節外側靭帯損傷後の固有感覚についての報告は少ない。本研究の目的は,陳旧性足関節外側靭帯損傷者における足部内転運動の固有位置覚を測定し,健常成人との違いを明らかにすることで,評価および治療の一助とすることとした。<BR>【対象と方法】対象は当院で陳旧性足関節外側靭帯損傷と診断され,靭帯再建術適応となった患者15名(男性7名,女性8名,年齢25.3±11.2歳)とし,これを損傷群とした。対照群は足部に既往のない健常成人20名40足(男性10名,女性10名,年齢24.5±3.2歳)とした。足部内転の位置覚測定にはGoniometer foot plate(中村ブレイス社製)を用いた。対象は裸足で装置の回転軸上に踵部を置き,第2趾尖を0°に合わせた。測定肢位は足関節底屈20°,膝関節屈曲70°とした。位置覚測定は,まず足部を目標角度まで自動的に内転させて5秒間保持した後に開始位置まで戻す。その後自動的に目標角度を再現させて再現角度を計測した。目標角度は5°,10°,15°,20°,25°,30°とし,角度ごとに3回ずつ測定を行った。目標角度と再現角度の差の絶対値を絶対誤差(Absolute Error:AE)とした。統計学的検定は損傷群の損傷側と非損傷側および対照群のAEの比較には二元配置分散分析を用い,多重比較にScheffe’s F testを用いた。有意水準は5%とした。本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て行われた。<BR>【結果】15°以上の全ての目標角度において損傷群の損傷側は対照群よりも大きなAEを示した(p<0.05)。損傷群の非損傷側は多くの目標角度において対照群よりも大きな誤差を示し,損傷側よりも小さなAEを示す傾向がみられた。<BR>【考察】足関節外側靭帯損傷者の損傷側は対照群よりも大きなAEを示し,固有位置覚が低下していることが明らかになった。目標角度が15°以上になり,外側にかかる伸張ストレスが大きくなると誤差が大きくなることから,靭帯に存在するメカノレセプターや,関節包などを含めた外側支持機構の不全が原因であると考えられる。さらに,非損傷側は損傷側よりは小さいAEを示したが,対照群よりも大きなAEを示す傾向がみられた。このことから,足関節外側靭帯損傷者においては非損傷側の固有位置覚も低下しているという可能性がある。これは損傷側の影響を受けた結果であるとも考えられるが,もともと位置覚が低下しているものが再発を繰り返して陳旧例になったという可能性もあり,再建術後の経時的な変化をみていく必要がある。<BR>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 2007 (0), C0577-C0577, 2008

    日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)

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