Branch Atheromatous Disease(BAD)に対する急性期理学療法経験

  • 村上 博之
    東海大学医学部付属八王子病院 リハビリ訓練科
  • 秋澤 理香
    東海大学医学部付属八王子病院 リハビリ訓練科
  • 高森 陽子
    東海大学医学部付属八王子病院 リハビリ訓練科
  • 宮古 裕樹
    東海大学医学部付属八王子病院 リハビリ訓練科
  • 杉本 篤夫
    東海大学医学部付属八王子病院 リハビリテーション科
  • 湯浅 直樹
    東海大学医学部付属八王子病院 神経内科
  • 古川 俊明
    東海大学医学部付属八王子病院 リハビリテーション科

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【目的】<BR>脳深部穿通枝領域の梗塞の発生機序としてBranch Atheromatous Disease(以下BAD)が近年注目されている。BADは,主幹動脈から穿通枝が分岐する穿通枝入口部のアテローム硬化による狭窄や閉塞の結果生じた,穿通枝灌流域の梗塞であり,血栓性機序を疑わせる急性期の段階的な症状増悪例が多い。よって,BADの急性期の理学療法(以下PT)では,症状増悪の危険因子である血圧低下に対し,アテローム血栓性脳梗塞に比べより慎重に進める必要があると思われる。しかし,リハビリテーション領域での報告は多いとは言い難い。そこで今回, BADと診断され当院に入院した症例の中の5症例における急性期PT経験に考察を加え報告する。<BR>【方法】<BR>(1)対象<BR>平成18年4月~9月の間にBADの診断で入院した5症例(男性4例・女性1例,平均年齢62.2歳,橋梗塞3例・内包梗塞1例・放線冠梗塞1例)を対象とした。PT開始時の意識状態は全例Japan coma scale1桁,麻痺は下肢ブルンストロームステージ(以下BS)VIが1例,Vが3例,IIが1例であった。全例,感覚や高次脳機能の著明な障害はなかった。<BR>(2)運動療法<BR>当院のBAD患者の安静度拡大は,発症日~10日目までアテローム血栓性脳梗塞患者と同様に進められるが,神経学的所見の増悪,バイタルサイン(以下VS)の変動に,より留意される。運動療法は,病棟でのVSの日内変動と神経学的所見の変化を確認してから行った。中止基準は土肥のAnderson改訂基準を用いた。血圧測定を頻回に行い,脳血流量の低下が予想される安静時収縮期血圧の15%以上の低下(田村らによる)を認めた場合,即座に臥位安静等の対処をし,当日の運動療法は中止とした。また,血圧変動の大きい症例は,主治医と連携をとり,安静度の範囲内であっても積極的な離床はせず慎重に行った。離床後,PT室での運動療法を開始した。<BR>【結果】<BR>運動療法中に15%以上の血圧低下を認めた症例は2例,認めなかった症例は3例であった。低下を認めた2例は,離床に時間を要したが,神経学的所見等の増悪はなく,それぞれ自立歩行(BSVI→VI),介助歩行(BSII→III)で退院となった。低下を認めなかった3例は,増悪なく発症前のADLを獲得し退院となった。<BR>【考察】<BR>今回の5症例は,一般的なアテローム血栓性脳梗塞患者に比べ離床に遅延を認めたものの,症状増悪に至ることなく,1例を除き発症前のADLを獲得した。脳梗塞の早期離床の重要性に関する報告は多数あるが,今回は,BADの特徴である症状増悪を考慮し,特に血圧低下に留意しながら,安静度の範囲内であっても離床にあえて時間をかけ,急性期PTを進めた。これが増悪に至らなかった要因の一つだと考える。また,血圧変動を中心としたVSの日内変動の把握,神経学的所見等の確認,主治医との連携も必須である。しかし,増悪を認めた症例の報告もあるため,今後は症例数を増やし検討する必要があると考える。<BR>

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