パーキンソン病患者の肢間協調性に対する視覚フィードバックと脳機能

  • 松尾 善美
    神戸学院大学総合リハビリテーション学部
  • 鎌田 理之
    大阪大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 井上 悟
    大阪大学医学部附属病院リハビリテーション部
  • 阿部 和夫
    甲南女子大学看護リハビリテーション学部

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【はじめに】我々は、これまでパーキンソン病患者の下肢間協調性(interlimb coordination)について数理モデルを用いて世界初で解析し、そのカオス的な協調性のダイナミクスについて英語論文や国際学会で発表してきた。近年Plotnikらは、すくみ足現象を引き起こしている歩行非対称性(gait asymmetry)が我々の提示した下肢間協調性の異常と近似していると報告したが、いまだにそれらに対する脳科学に立脚したアプローチは開発されていない。そこで、今回パーキンソン病患者の下肢間協調性に対する視覚フィードバックを用い、視覚フィードバックと脳機能について検討したので報告する。<BR>【目的】パーキンソン病患者における左右独立駆動型エルゴメータでのペダリング運動時に変調を来たす下肢協調運動障害に対して、視覚的に運動時の左右位相差の提示と修正を行うことができる協調運動フィードバックプログラムによる協調運動の改善と脳機能の関連を明らかにすることである。<BR>【方法】パーキンソン病患者7名と健常者7名を対象に左右独立駆動型エルゴメータであるストレングスエルゴ240W(Mitsubishi Electric Engineering Co., Tokyo, Japan) によるアシストモードでの自由ペダリング下にて前頭頭頂部の脳血液動態を光イメージング装置(Hitachi ETG-4000; Hitachi Medical Co., Tokyo, Japan) にて3分間計測し、次に目視にて逆相で3分間ペダリングを行うよう指示し、脳血液動態を計測した。さらに実際の回転数と位置データより算出した左右間の位相差をリアルタイムで患者の目前に液晶画面で表示し、位相差を改善する目的で作成された視覚的フィードバックプログラムにより、下肢の協調運動回復のため、エルゴメータによるペダリング運動中の脳血液動態を3分間計測した。脳賦活領域とその酸素動態より、運動フィードバックとの関連についてパーキンソン病患者と健常者のデータを加算平均処理後に差分t検定を行い、解析した。<BR>【結果】ペダル回転速度を視覚化したフィードバック情報を与えるとパーキンソン病患者では右前頭前野の酸化ヘモグロビンおよび総血液量が有意に低下し、右運動野は逆に有意に上昇していた。患者はすべて右優位の症状を有し、左下肢でペダル運動の協調を回復させており、その際、視覚フィードバックプログラムの利用により、症状優位側前頭前野の活動は抑制された。<BR>【考察】パーキンソン病患者は、症状非優位側下肢で肢間協調性を回復させようとしていた。これは我々のトレッドミルでの視覚フィードバックを用いた先行研究と同様の結果を示した。前補足運動野は運動学習と関係が深く、特にその学習初期に賦活されるとされているが、本研究では視覚フィードバックが好影響をもたらしたと考えられる。<BR>【まとめ】パーキンソン病患者の運動フィードバックには、症状非優位側に情報を与えることが有効である可能性が示唆された。

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