三次元動作解析装置を用いた歩行中の足部の動きの分析

  • 岩橋 洋子
    広瀬整形外科リウマチ科リハビリテーション科
  • 永井 聡
    広瀬整形外科リウマチ科リハビリテーション科
  • 広瀬 勲
    広瀬整形外科リウマチ科

Description

【目的】本研究の目的は、日頃臨床で足部の評価として視点にしている各部分が健常者の歩行ではどのように動いているかを計測、分析し、基礎データを得ることである。<BR>【方法】1)対象 著明な整形外科疾患の既往のない22歳から38歳までの健常成人男性13名26肢を対象とした。平均年齢は28.7歳であった。<BR>2)計測動作 自由歩行を15試行行った。歩き出しは左右どちらの足からかは規定せず、歩行速度や歩幅は各自最も歩きやすい自然歩行とした。マーカー貼付後に計測空間に慣れるために数回練習した後に計測した。<BR>3)計測機器 計測は三次元動作解析装置VICON MX(赤外線カメラ10台)とAMTI床反力計6枚を使用した。計測周波数はVICON及び床反力計とも100Hzとした。反射マーカーを身体各部位に貼付し、空間座標データを計測した。マーカー貼付位置は、頭部3箇所、第1胸椎棘突起、胸鎖関節中央、剣状突起、両側の上前腸骨棘、上後腸骨棘、肩峰、股関節、膝関節、腓骨頭、脛骨の内側上顆、皮膚の動きの比較的少ない下腿の内側と外側、静止立位のときのみ内果と外果(踵骨のマーカーと隣接するため歩行時にはカメラが認識しなくなってしまうため)、踵骨の載距突起と腓骨筋結節、踵骨中央、第1、第5中足骨、静止立位の時のみ第2中足骨(踵骨の座標系定義で使用するため)の計40点に貼付した。<BR>4)データ処理 得られた空間座標データから踵骨と下腿には局所座標系を定義し、ボディビルダーを用いて下腿、踵骨、前足部の絶対角度、下腿と踵骨の相対角度、踵骨に対する前足部の内外反角度を算出した。本研究では前額面の足部の動きに着目し、内外反の動きを中心に分析を進めた。各試行の立脚期の角度を抜き出し、被験者間の比較を行うために100%正規化した。またばらつきを見るために各被験者の分散を算出した。<BR>【説明と同意】全ての被験者に対して、本研究の趣旨を説明し、本人に承諾を得た後に計測を実施した。<BR>【結果】1)各セグメントの角度の結果 踵骨の絶対角度は立脚開始直後と立脚が終わる直前に外反方向へ動く傾向があった。立脚開始直後の外反が終了した後に内反方向へ動く被験者や立脚期全体を通して少しずつ外反方向へ動いていく被験者もいた。立脚開始直後の外反角度や全体の外反角度は個人差が大きかった。距骨下関節の角度として算出した踵骨と下腿の相対角度は立脚開始直後に外反へ動き、その後内反に動く傾向があった。しかし、各被験者によって内反へ動き出す時期や動く角度は異なっていた。前足部の絶対角度は立脚開始直後と立脚期が終わる直前に外反方向へ動く傾向があった。踵骨に対する前足部の角度は立脚の後半で大きく内反方向へ動く傾向があった(ここでいう内反とは踵骨を中間位として考えたときに小趾側が下がっている状態のこと)。各被験者で内反方向へ動き出す時期や角度は異なっていた。<BR>2)分散の結果 踵骨の絶対角度は立脚期の20%くらいで最小となり1度以内であった。しかしそれ以後は被験者ごとの違いはあるものの徐々に分散が大きくなる傾向があった。下腿の絶対角度は立脚期を通して分散が小さい傾向があった。距骨下関節は立脚期の30%くらいまでは分散が小さく、1.5度以内であったが、それ以後は踵骨と同じように分散が大きくなる傾向があった。また、前足部の絶対角度の分散は立脚期の0-20%と80-100%で大きくなる傾向があった。前足部の絶対角度と踵骨に対する前足部の角度の分散の波形は似た形を示したが、立脚期全体を通して踵骨に対する前足部の角度の分散のほうが若干小さい傾向があった。<BR>【考察】分散の結果から踵骨では立脚期の20%くらいで分散が最小となる傾向があった。また前足部の分散も立脚期の0-20%、80-100%では大きく、その間は比較的小さい値を示していた。これは踵骨や前足部へ荷重がかかっている時期は動きにばらつきが少なくなるようにして、安定した歩行が出来るようにしているものと考える。また、踵骨に対する前足部の角度の分散は前足部の絶対角度の分散よりもよりも小さい傾向があり、これは足部の中での捻れ方ができるだけ一定になるように各セグメントの動きで調節されているものと考える。<BR>【理学療法学研究としての意義】過去の先行研究にも歩行時の各セグメントの相対角度を算出した報告はあったが、理学療法士が臨床上視点にする部分を指標とし動きを計測、分析した報告は少なかった。そのため正常な動き方をあまり知らずに評価をしていたのが現状である。本研究は日頃疾患のある方や高齢者を見る機会の多い理学療法士にとってその病的な足部の動きに気がつき、比較するための基礎データになりうると考える。今回は各セグメント間の動きの分析が主な内容になっているが、今後は各セグメント間の動きの関係や臨床で簡便に計測が可能な評価と動きの関係なども探っていきたい。

Journal

Details 詳細情報について

  • CRID
    1390282680544034688
  • NII Article ID
    130004581737
  • DOI
    10.14900/cjpt.2009.0.a3o3024.0
  • Text Lang
    ja
  • Data Source
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • Abstract License Flag
    Disallowed

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