脳梗塞急性期における機能予後を予測する因子について

  • 谷川 喜美
    医療法人天神会新古賀病院リハビリテーション部
  • 那須 千草
    医療法人天神会新古賀病院リハビリテーション部
  • 江藤 修
    医療法人天神会古賀病院21リハビリテーション部
  • 一ツ松 勤
    医療法人天神会新古賀病院脳卒中脳神経センター

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  • 理学療法初期評価の側面から

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【目的】近年医療機関の機能分化が行われる中、急性期病院の在院日数は短縮化傾向にある。脳卒中患者において急性期治療終了後の転帰は単なる回復期病棟への移行という表現では難しく、現場の理学療法士として予後予測に苦悩するケースも少なくない。そこで、脳梗塞発症後早期の段階での予後を示唆する因子について、理学療法初期評価時の各種因子を用いて調査したので報告する。<BR>【対象】H18年4月1日からH19年3月31日の期間に当院脳神経外科へ入院した急性発症の脳梗塞患者のうち、理学療法実施依頼となった119例(男性71例、女性48例、死亡退院を除く)を対象とした。平均年齢74.7±10.1歳、障害部位は、大脳半球主幹動脈領域梗塞53例、大脳半球ラクナ梗塞36例、脳幹梗塞18例、小脳梗塞12例。脳梗塞発症から理学療法開始までの期間は3.0±1.9日であった。<BR>【方法】対象を転院群80例と自宅退院群39例に分け、理学療法初期評価記録より、1)意識障害(Japan Coma Scale;以下JCSおよびGlasgow Coma Scale;以下GCS)、2)認知症、3)高次脳機能障害、4)Brunnstrom stage(上肢、手指、下肢)、5)感覚障害(表在覚、深部覚)の各項目を後方視的に調査し、予後に影響する因子を中心に比較検討を行なった。統計処理はMann-WhitneyのU検定を用いた。<BR>【結果】両群の間に有意差を認めたものは意識障害(JCS、GCS)、高次脳機能障害の有無、Brunnstrom stage(上肢、手指、下肢)、感覚障害(表在覚、深部覚)であった(p<0.05)。認知症の有無では有意差を認めなかった。さらに、障害部位においても比較を行ったが有意差は認めなかった。<BR>【考察】急性期における理学療法初期評価時点で予後に影響する因子として、意識障害、高次脳機能障害、Brunnstrom stage、感覚障害が認められた。認知症の有無においては有意差を認めず、認知症が脳梗塞発症を契機に出現する病状とは言えないため予後を決定する因子にはなり得ないことが考えられた。意識障害や麻痺の程度がADL能力に影響するため自宅退院が困難になることは予測されたが、感覚障害の有無も予後に影響する可能性があると考えられた。しかし、感覚障害をもつ群は麻痺も重度であるものが多く、感覚障害の有無のみによる予後の決定は危険を伴うことが考えられ慎重に判断すべきである。<BR>【まとめ】今回、脳卒中急性期理学療法初期評価内容での短期予後予測について検討した。意識障害、運動麻痺、感覚障害において予後に影響する傾向が認められた。各項目が複合的に影響するケースも多く、今後の検討が必要である。また、症例の家族構成や介護力の有無等の社会的背景と予後についても調査を行っていく必要があると思われた。

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