- 【Updated on May 12, 2025】 Integration of CiNii Dissertations and CiNii Books into CiNii Research
- Trial version of CiNii Research Automatic Translation feature is available on CiNii Labs
- Suspension and deletion of data provided by Nikkei BP
- Regarding the recording of “Research Data” and “Evidence Data”
立脚後期における下腿三頭筋筋力と足趾把持力について
Description
【目的】] ヒトの歩行時において歩幅を延ばすには床反力作用線が中足骨頭を越える必要があり、それには足趾屈筋群の活動やMP関節の柔軟性が関与するといわれている。筋力と歩幅について足趾把持力が強ければMP関節と母指末節で構成するレバーアームが安定し、床反力作用線が足関節軸からより遠位となることで歩幅が拡大すると考えるが、足趾把持力と歩幅に関する報告は少ない。本研究では足趾把持力や下腿三頭筋筋力は歩行時のTerminal Stance(以下TSt)やPreswing(以下PSw)における足関節底屈角度(以下PF)に関係し、歩幅の拡大・歩行速度の向上に関与すると仮説を立て検討した。<BR><BR>【方法】健常者女性8名(左右16肢、年齢19.6±0.5歳、体重55±3.2kg、身長162±5cm)を対象とした。1.足趾把持力の測定:アーチ高率・足部柔軟性(共に村田らの方法)、体重を測定し、これを村田らの考案した予測式に代入して足趾把持力を求めた(足趾把持力=-6.265+0.765×足部柔軟性+0.320×足部アーチ高率+0.111×体重)。2.下腿三頭筋最大筋力の計測:CYBEX770-NORMを用い、足部を専用のプレートに固定。腹臥位にて足関節底屈・背屈を行い、30°/secで計測した。その後山本の計算法により等尺性最大筋力を求め、体重で正規化した。3.3次元動作解析による分析:通常歩行と速歩時の歩行速度、歩幅、TSt・PSw時のPF、立脚時間をVICON MX、AMTI製床反力計6枚を用いて測定した。4.統計処理:足趾把持力、下腿三頭筋筋力、歩行速度、歩幅、TSt・PSw時のPF、立脚時間の相関関係をSpearmanの順位相関係数(rs)を用いて検討した。有意水準はいずれも両側5%未満とした。<BR><BR>【説明と同意】研究前に研究内容・研究目的・倫理的配慮やデータの使用に関して説明を行い、対象者から同意書への署名を得た。<BR><BR>【結果】速歩ではTSt・PSw時のPF・歩幅・歩行速度が通常歩行よりも増大し、立脚時間は減少した(P<0.01)。通常歩行・速歩ともに歩幅とTSt時のPFに相関が見られ(通常歩行rs=0.6・速歩rs=0.44)、歩幅と歩行速度にも相関があった(rs=0.69)。速歩においては、歩幅を制御変数とした偏相関係数でTSt時のPFと歩行速度の間に負の弱い相関が見られた(rs=-0.45)。立脚時間と下腿三頭筋筋力で相関があり(通常歩行rs=0.5・速歩rs=0.73)、立脚時間と足趾把持力は速歩のみに弱い相関があった(rs=0.44)。またそれぞれの被験者で下腿三頭筋筋力と足趾把持力は弱い相関(rs=0.51)が認められた。通常歩行・速歩におけるTSt・PSw時のPF、歩幅、歩行速度の群と下腿三頭筋筋力、足趾把持力、立脚時間の群との間に相関は認められなかった。<BR><BR>【考察】立脚時間と下腿三頭筋筋力・足趾把持力の関係については、足関節・足趾は立脚中に下腿三頭筋筋力・足趾把持力により制御され、下腿三頭筋筋力・足趾把持力に比例してレバーアームを延長しやすくなると推察した。また、速歩におけるTSt時のPFと歩行速度の関係については、速度の上昇に伴い下腿三頭筋の遠心性収縮による関節制動の働きが多くなることで、TSt時における下腿三頭筋の遠心性収縮の時間的割合が増えPFが減少したと考えた。今回下腿三頭筋筋力の%BWは106±21%と全体的に高く、足趾把持力も村田らの報告した健常者の値と同等で差が少なかったため、仮説した内容とは異なる結果となったと考える。植松は底屈モーメントと歩行速度について若年健常者では相関はないと報告しているが、今回下腿三頭筋筋力や足趾把持力からの視点でもそれを裏付ける結果となった。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】下腿三頭筋は遠心性収縮を行うことでいわゆるエネルギー蓄積型足部のような役割を果たし、TSt時の下腿三頭筋の遠心性収縮が速度を上昇させる要因になると推察された。臨床では、若年者でも特に足関節の可動域制限のある症例は歩行速度が低下しやすい印象を受ける。歩行速度が低下している症例については、筋力だけでなく可動域の改善・疼痛の改善を図ることで下腿三頭筋の遠心性収縮を発揮しやすい形にする必要があると考える。高齢者においては歩行時のTStからPSwにかけて踵の挙上が少なく歩行速度が低下しやすい傾向にあるため、今後高齢者も含め下腿三頭筋筋力・足趾把持力・PF・歩幅・歩行速度の因果関係をさらに詳細な分析を行い臨床での評価方法なども検討していく。
Journal
-
- Congress of the Japanese Physical Therapy Association
-
Congress of the Japanese Physical Therapy Association 2009 (0), A3O3007-A3O3007, 2010
Japanese Physical Therapy Association(Renamed Japanese Society of Physical Therapy)
- Tweet
Details 詳細情報について
-
- CRID
- 1390282680544100736
-
- NII Article ID
- 130004581720
-
- Text Lang
- ja
-
- Data Source
-
- JaLC
- CiNii Articles
-
- Abstract License Flag
- Disallowed